解師

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解師歴が長くなればなるほど、人間に認識される事は少なくなり、彼岸へ引っ張られる 彼岸へ完全に入ってしまうと、飲み込まれて出られなくなる それを無くす為に解者や解魔がいる 解魔だけで解師を支える事は難しく、共に飲み込まれてしまうケースも少なくない ただ、サクは違う 6歳から解師をしている為に、対処法をきちんと理解している それでも、2度飲み込まれそうになった 8歳の時と、11歳の時に 11歳の時、飲み込まれそうになった所を助けてくれたリュウが目を覚まさなくなった 彼岸の影響だ 弱い者であれば僅か1ヶ月で死ぬが、リュウはまだ頑張っている もう一度サクとハルに会うために 暗い中を掻き分けて、此岸に帰って来ようとしている もう一度 大好きなあの子達に会いたい あの子達の笑顔が見たい、と 『サク、サク。もう朝やで。起きいよ』 「……いや」 『んなグズんな。主来とるで』 「…は?」 『着替えて来いよ』 「嘘付かんでよ」 『嘘なんか付いてへん』 ほら、と言うようにハルがリビングを見る そこには確かに主がいた そして、知らない男も 渋々着替えて身だしなみを整え、リビングへ行く 「おはようサク」 「なんで来たん」 「こちらから行かなければ来ないだろう」 「……どうせ解者の事やろ」 「そうやね」 やっぱり、とサクが溜息をつけば主がくすくすと笑った 「いらん」 「そうもいかんやろ」 「5年堕ちてへんし、俺とおるから解者みんな不幸になんねん」 「あの子しか今までの解者はおらんやろ。それに、解師1人やったら持つ武器に限りあるしな」 「やから強なった。今はハルとナイフと銃と解器あったらええ。それ以外はいらん」 「そんな事言わんの。せっかく新しい解者連れて来たんに」 「どうも」 「いらん言うとる」 ハルがダメだこりゃと仕草をする あからさまに嫌がるサクだが、主は気にしない 連れて来られた新しい解者が、サクの前に立つ 「主に向かってその口のきき方は無いんちゃう?」 「自分関係あれへんやろ」 「あるわ。新しい解者や言われたやろ」 「いらんっつっとんの、聞こえらんのか」 「聞こえとる」 頭をガシガシと掻くサクの手を掴む解者 サクが睨んで振り払う 「触んなや」 『サクどこ行くん』 「外」 『えぇ、危ないって』 「主、とっととその愚図連れて帰って」 「愚図って何やねん!」 「気を付けなさいね」 「……言われらんでも」 バタンとドアが閉まり、サクが居なくなった はあ、とハルが溜息をつく 『ああなったら面倒臭いねん』 「はは、ごめんねハル」 『ええけどさあ』 チラリと解者を見て口を開くハル 『サク、初対面の人とか大嫌いやからさ。解者やったらなおさら態度悪いし、無闇矢鱈に触らんといたってな』 「ガキかいな」 『まだガキやで、クソガキ。16やからな。でも、あんたよりよっぽど強いし、頼りになるから』 「どんな教育されたらああなんねん」 『……そやなあ』 サクの部屋に入って棚を見る ナイフと銃が無い きちんと自衛の為に持って行っているのだろう 今日は曇り 逢いやすい 「ほんま最悪」 とんとん、と電柱の上を跳んで移動していくサク 下の道路には、楽しそうに話をしながら歩いていく生徒達 忙しそうに電話片手に颯爽と歩くサラリーマン 誰も、サクのことを見ない 電柱の上に立ち止まり、路地裏の方へ目を向ける 「ハル」 『へいへい』 シュルンとハルが何も無い所から出てきた ナイフを持って飛び降り、怪の所へ ハルも後をついてきた 怪がザワっと膨れ上がり、サクを取り込もうとする 「ウザい」 『サミしイ、イかナイで』 「知るか、んなもん」 慣れたように、というか確実に慣れているのだが、パパっとナイフを振る 時間差で、怪からブシッと血のようなものが吹き出た サクは避ける様に後ろに飛び、代わりにハルが前に出た 『自分だけがさみしいんとちゃうぞ』 『ギッ、ギィィイイイ』 ハルが喰い、怪がいなくなる 跳ぼうとしているサクに、ハルが聞いた 『まだ外おるん?』 「曇っとるし、多いやろ」 『せやな。また呼んでや』 「ん」 ゴミ箱の上に乗り、ジャンプして屋根のへりを掴んで一回転してから屋根に登った そこからまた電柱に跳び移り、いなくなったサク 『どう?』 「サクまた成長したな。前よか動きがええ」 「……」 『やろ?うちは別に解者おってもおらんでもどないでもええけど、サクが嫌って言うんやったらそれに従うで』 「……あいつは、何歳から解師しよるん」 結界を解いて現れた主と解者候補 解者にとって気になるのは、その人が解師になってどれくらいのキャリアがあるのか、だ 未熟な解師は怪に呑み込まれやすく、また解者にも苦労をかける 『6歳から』 「…っ、そない小さい時からって、なんで」 「あの子は特別やからなあ。親もおらんし」
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