00 せっかく双子で奮闘したのに予想外すぎる。

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00 せっかく双子で奮闘したのに予想外すぎる。

「リリス・イム・ミルファイア。今日この場をもって、君との婚約を破棄する!! これが、余から君への断罪だ!」  エボルシオン魔法学園第一学期終業パーティ代表挨拶の終わりにそんな言葉が響き渡った。  針のような沈黙が佇む。その場にいた全員がその言葉を理解するのに数秒必要だったのだ。そして言葉の意味を理解した人間達がざわざわと騒ぎ始める。そんな中、婚約破棄を告げられた本人──リリスは顔を真っ青にして震えていた。 「れ、レックス様……!? そんな、どうして……っ!? 私は……っ、私は!!」  そう叫び、己の婚約者であったレックス・ブルー・アドラシオンに縋る。それによってさらに場は混沌へと化した。  しかしそんな中、まるでこの状況を前もって知っていたように冷静な二人がいた。  二人──否──その双子は兄の方をレン、妹の方をサクラという。  双子はパーティ会場の隅でこそこそと身を寄せ合い、内緒話をしていた。 「……おい桜。ちょっと予定(シナリオ)とはずれたけど、それ以上にいい形で終われてよかったな」 「うん。これで正々堂々と私はレックス様を、蓮はリリスを攻略できるね!」 「あぁその通り! よぅし! リリスたんは絶対に俺が幸せにしてやる!」 「私もこれからレックス様と夢みたいな素敵な恋を……えへへ~」  そう顔をデレデレと緩ませつつ、双子はステージ上のレックスとリリスの様子を温かい目で見守り続ける。  当のステージ上ではリリスが自分との婚約を破棄したレックスを見上げ、何かを察したように涙を流した。レックスはそんなリリスにそっと眉を下げて微笑み、頷く。  そして二人にしか聞こえない音量で会話を挟んだ後、お互い爽やかに握手をした。会場は未だに混乱しつつも婚約破棄は当の本人達の合意の上であることを知り、緊張が解れたようだ。  ──するとそこで、レックスとリリスがぐるりとシンクロして身体の向きを変えた。二人は会場の隅にいる双子にすぐに気づくなり、足早にこちらに向かってくるではないか。  迫ってくる二人に対して戸惑う双子。しかも何故かレックス&リリスは頬を赤らめていた。恋愛ゲーム特有のスチルが、双子の目にはハッキリ見えた瞬間だ。 (え? ここでスチル? ここで俺、リリスたんとのルートが始まっちゃうのか!? うぉおおおリリスたん可愛いぃぃいいい絶対に俺が幸せにするからな!! っていうかもう俺に惚れてないこの子顔赤くない!? まだ俺攻略してないしあんまり話したこともないのに! でも可愛いからもうなんでもいいぃいい!) (えぇぇぇ! レックス様圧倒的顔がいいぃいいい! これには干物な私の心も潤うわ太平洋だわ。でもまだあんまり話したことないけどなんでレックス様のスチルが見えたんだろう? まぁ難しいことは考えない! 私とレックス様は最初から結ばれる運命だったのね! レックス様私も愛してます抱いてぇぇぇええ!!)  そんななんともIQの低い双子の心の叫びに応えるように、リリスは双子の片方の手をきゅっと握りしめ、レックスはもう一方の手を握り膝をついた。 「余の心はお前のものだ。余と、このエボルシオン王国第一王太子レックス・ブルー・アドラシオンと結婚してくれないか? ──()()」 「これで私は、自分の素直な心をあなたに伝えられる。……好きよ。あなたのプロポーズに応えます。幸せにしてくれないと許さないんだからね──()()()」 「「──は?????」」  双子よろしく、レンとサクラの声が綺麗に重なる。  会場にさらなる混沌が生み出された。  ──これは、とある双子がとある恋愛ゲームの主人公に転生した物語。  ──自分の推しである異性のキャラと結ばれたいのに何故か同性のキャラにモテてしまう二人の奮闘記である。
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