助け,助けられ

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「ここで着替えんのはちょっと……」 「だ……っ,大丈夫! わたし,後ろ向いてるからっ!」  瑠花は真っ赤になって,慌てて俺に背中を向けた。やっぱり免疫がないらしい。 「……うん。悪いなあ」  俺はとりあえず,上だけでも着替えておくことにした。 「終わったよ」 「じゃあ,脱いだやつはお洗濯に出しておいて。あとでわたしが洗って干しておくから」  彼女は米と水を入れた鍋を火にかけたところだった。火加減に気をつけながら煮込んでいる姿は,おかゆを作り慣れている人のそれにしか見えなかった。 「おかゆができる前に,体温測っとく?」 「うん……,そうだな」  俺は彼女に言われた通り,体温計で熱を測った。  そして,彼女がきてから俺は不思議な感覚に(おそ)われていた。ちょうどさっきまで見ていた夢の中みたいに,妻に看病されている夫のような……。  ピピピ…… 「三十七度二分……。ちょっと下がったな。朝測った時は八度あったから」 「そうなの? ……じゃあ,もうちょっとかな」
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