78人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「ここで着替えんのはちょっと……」
「だ……っ,大丈夫! わたし,後ろ向いてるからっ!」
瑠花は真っ赤になって,慌てて俺に背中を向けた。やっぱり免疫がないらしい。
「……うん。悪いなあ」
俺はとりあえず,上だけでも着替えておくことにした。
「終わったよ」
「じゃあ,脱いだやつはお洗濯に出しておいて。あとでわたしが洗って干しておくから」
彼女は米と水を入れた鍋を火にかけたところだった。火加減に気をつけながら煮込んでいる姿は,おかゆを作り慣れている人のそれにしか見えなかった。
「おかゆができる前に,体温測っとく?」
「うん……,そうだな」
俺は彼女に言われた通り,体温計で熱を測った。
そして,彼女がきてから俺は不思議な感覚に襲われていた。ちょうどさっきまで見ていた夢の中みたいに,妻に看病されている夫のような……。
ピピピ……
「三十七度二分……。ちょっと下がったな。朝測った時は八度あったから」
「そうなの? ……じゃあ,もうちょっとかな」
最初のコメントを投稿しよう!