冬の宵

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緑山(みどりやま)学院大」 「りょ、緑大ですか!?」  緑山学院大学、通称「緑大(りょくだい)」は、トップの慶京大には劣るけれど、それでもかなりレベルの高い大学として知られている。もちろん、関東圏の大学だ。うちからも通える範囲にある。  確かお姉ちゃんも受けていたはずだった。もし慶京大に落ちたら、何校か受けていた滑り止めの中からは、緑大を一番に挙げていたと思う。  私は若干眩暈を覚える。章臣先輩の成績はよく知らなかったけど、たぶんいいんだろうな、くらいに思っていた。でも、いいんだろうな、レベルじゃない。  めっちゃいいじゃないかっ! 学年でもかなり上ってレベル! 下手したら、TOP10に入るレベル! 「実は、もう試験は受けてる」 「はいっ!?」 「後は結果待ち」  ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って! 今試験を受けていて、結果待ちということは……。 「学校推薦取れたから」  学校推薦ーーー!!  うちの学校は、枠はかなり少ないけれど、一流私大の指定校推薦枠がある。それを狙う人間は多い。だって、推薦が取れたら、一般よりも受験科目は少ないし、早くに合否がわかる。皆より早く受験から解放されるのだ。  ただ、皆考えることは一緒なので、その枠を取ろうと必死だ。しかも緑大なんて、かなり熾烈な争いになる。それを取ったというのだろうか、章臣先輩は。 「緑大の推薦枠、取っちゃったんですか?」 「うん、何とか。早く受験から解放されたかったし」 「まぁ……そうですよね」 「うん」  何でもないように言う先輩が恐ろしい。緑大の推薦枠が取れるということは、下手したらTOP10じゃない。確実にTOP10だし!!
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