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高台寺の夜間特別拝観を終え、私と章臣先輩は夕食を済ませ、宿泊先のホテルに戻って来る。
それぞれシングルの部屋を取っているので、カードキーをもらい、エレベーターに乗る。部屋は、隣同士だ。
部屋の前に到着し、章臣先輩は私の頭をポンと撫でる。
「それじゃ、明日、寝坊するなよ」
「だ、大丈夫ですっ」
先輩は笑いながら手を振り、自分の部屋のドアを開ける。私もドアを開ける。そして、部屋へ入り、ドアの隙間から顔を出してペコリと頭を下げた。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
私たちは、同時にドアを閉じた。私は奥に入り、ポスンとベッドに転がる。
あー、楽しかった! でも……。
「なんか、寂しい」
さっきおやすみの挨拶をしたばかりだというのに、もう顔を見たくなってしまっている。
あぁ、私は今、すごく贅沢になっている。我儘になっている。こうして一緒に旅行に来て、一日ずっと一緒にいられただけでも十分なのに。
足りない、足りないよ……。
私は気持ちを切り替えるため、お風呂に入ることにする。今回はビジネスホテルなので、温泉がなくて残念。今度は温泉のあるところに泊まりたいなぁ。
そうするには、お金がもっと必要だ。バイトしたいけど、受験のことも考えなきゃいけない。先輩と同じ緑大に行きたいけど、今の私の成績じゃ難しい。あぁ、やることがいっぱいだ。
そんなことをいろいろ考えながらシャワーを浴び、髪にバスタオルを巻いたまま部屋に戻る。すると、私の携帯が点滅していた。
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