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「まどか、キーは?」
「え?」
「カードキー」
「……あっ!!」
私の顔がサーッと青ざめる。カードキー、持って出るのを忘れてしまった!!
私の顔を見て察したのだろう。章臣先輩は、さっきとは比べ物にならないくらい、盛大な溜息をついた。
「ど、どうしましょうっ!?」
「まぁ、フロントに電話したら開けてくれると思うけど」
「そっか、そうですよね」
「かけるか?」
「えっと、帰る時でいいです」
「そうか」
先輩がベッドに腰掛ているので、私も隣に行ってちょこんと腰掛ける。すると、先輩が手を額にやった。あれ? 私また、呆れられてる?
「先輩?」
「なんだろう……。安全だと思われてるのが、いいことなのか、悪いことなのか」
「へ?」
「複雑だ……」
なんかよくわからないけれど、まぁいいやと私は携帯の画面を操作し、今日撮った写真を出す。そして、先輩の方へ向けた。
「これ、綺麗に撮れたんです!」
「へぇ……風が吹いた時だよな。桜吹雪って感じで、すごくいい」
「ですよね! 奇跡です」
「奇跡って」
「私、下手くそだから。真由ちゃんなんて、撮るのがすっごく上手くて……」
お互いに写真の見せ合いっこをして話していると、時間なんて忘れてしまう。話に夢中になっていたけれど、ふと、部屋の窓から月が見えることに気付いた。
月といえば……初めて入れてもらった先輩の新居を思い出す。
あそこから見た月も綺麗だった。あの時は何もなかった部屋も、今では家具やら何やらが運び込まれ、すっかり部屋らしくなっている。
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