923人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
「せんぱ……っ」
章臣先輩の唇が落ちてくる。何度も、何度も。
これまでのキスとは全然違う。まるで、食べられてしまいそうな──。
いつもより荒々しいキスをしながら、先輩は私の髪を撫でる。キスとは違って、その手はどうしようもないほど優しくて。
「あ……み……ぱい……」
声が途切れながらも、章臣先輩の名前を呼ぶ。その度に、先輩は私の髪を何度も優しく梳く。それが心地よくて、また呼ぶ。
もう数えきれないほどのキスを交わし、最後にぎゅっと抱えられる。私の上半身は、すっぽりと章臣先輩に埋まってしまった。
「耐久レースやってるみたいだ」
「耐久レース?」
「……理性の」
「……っ」
恥ずかしくて顔を俯けると、先輩が私の髪を自分の指に巻いて、くるくると弄り始める。
「先輩? 何を……」
「まどかが俯いてるから」
え? いじけてるとか!? 章臣先輩が、まさかっ!
ビックリして顔を上げると、また唇が重なる。
「もう、そういう格好するなよ」
「……はい」
「食べてもいいって勘違いするから」
「たっ……!?」
顔から火が出そうになり、また俯こうとした。でも、それは呆気なく阻止され……再びキスの雨が降る。
あぁ、もう数えられないや。数えるのも、バカらしくなってしまう。
心が震える。何度キスをしても、もう一回、とねだる気持ちが湧き上がる。
怖い気持ちもあるけれど、私は、章臣先輩なら食べられてもいいと思う。先輩が食べたいと思ってくれるなら。
最初のコメントを投稿しよう!