春の嵐

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 季節は巡り、再び春がやって来た。  一年前の入学式を思い出す。期待と不安に胸を膨らませ、教室に足を踏み入れた。  そして、一年が経った。  校庭の桜を眺めながら、私、平井まどかは一年前に思いを馳せる。  この一年、いろんなことがあった。辛いこともあったけれど、それらを全部吹き飛ばしてしまうほどの幸せな出来事もあった。改めて思うけれど、ここへ来てよかったなぁ……そう感じずにはいられない。 「まーどか!」  背後から肩をポンと叩かれ、私は振り返る。すると、真由ちゃんが不思議そうな顔をして立っていた。 「何ぼんやりしてんの? 今日、図書委員の顔合わせでしょ?」 「え……あっ!」  時計を見て驚く。ちょっと時間を潰すつもりが、ちょっとどころではなくなっていた。急がないと遅刻する! 「真由ちゃん、ありがと! 行ってくるっ!」 「いってらっしゃーい!」  手を振る真由ちゃんに見送られ、私は教室を後にする。  去年、同じクラスで仲良くなった高野真由(たかのまゆ)ちゃんとは、今年もまた同じクラスになれた。  そして今日は、私が所属する図書委員会の顔合わせ。  2、3年の顔ぶれは変わらないけれど、新入生を迎えての初顔合わせなのだ。先輩となったのだから、遅刻するわけにはいかない。  私は大慌てで、委員会が行われる図書室へと急いだ──。
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