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ここにも悩める一人の男が、女装コンテストの張り紙を睨み付けていた。
「それ、出るの?」
「オスカル様!」
背後から声をかけられたルイーズが、ビクリと反応する。幸い周囲に人はいなくて、ほっと息をついた。
「実は私ではなくて、コナンが出る気でおりまして」
「あー、可愛いよね」
「はい、最高です」
「はいはい」
そう、完璧なのだ。コナンの可憐さときたら年を経ても変わらない。柔らかな髪に、愛らしい顔立ち。小さな身体に可愛らしいドレスなど、まるで人形のようだ。
女装した彼に恋をしたルイーズとしては、本当に自慢の嫁なのだ。
だが、それを自分だけが愛でるのがいいのだ。他人に見せびらかすのは、なんだか容認できない。
「いいじゃん、出させてあげれば。彼が出たいって言ってるんだよね?」
「はい。あの子の女装は私だけの宝物で、大事に囲いたいのですが。誰かがあの子の可愛さに心惹かれでもしたら、くびり殺します」
「お前の嫁ってだけでそんな奴いないよ」
呆れ顔のオスカルが溜息をついた。
「そもそもさ、なんでコナンは出たいわけ?」
「景品になっている、レストランのチケットが欲しいと」
「連れていってあげれば?」
「それでは意味が無いと言われてしまいまして。結婚して二年くらい経ちまして、贈り物をしたいと言われました」
そんな意地らしい嫁、とても可愛くてたまらない。抱きしめて「気にしなくていい」と伝えながら結局欲望に負けた、そんな夜。
「可愛いじゃん。いいじゃん、出してあげれば」
「ですが……」
「お前の歪んだ愛情で、最高の愛らしいコナンにしてあげたら? これも、愛の共同作業でしょ」
愛の、共同作業……
想像してみる。愛らしいコナンにコルセットを嵌める瞬間。少し苦しそうにしながらも健気に「もう少し締めていいです」と言う時の顔。着せるドレスはむしろクラシカルな人形にして、メイクも。ふっくらとした顔に巻き髪のカツラとか似合うだろうな。柔らかく小さな唇にピンクの口紅が似合いそうだ。
「終わったら当然、脱がせながら致すんでしょ?」
「!!」
想像だけでまずい部分が熱くなってくる。もの凄く困る。
「……変態だよね、ルイーズ」
「否定いたしません」
「潔い変態バカって、僕嫌いじゃないよ」
呆れながらもそう言ったオスカルに苦笑し、ルイーズは溜息をつく。そして、可愛い嫁の待つ自室へと戻っていった。
二人の愛の巣、もといルイーズの部屋にはコナンがいて、今日こそはという決意を秘めた目をしている。こういう目、とてもそそる。
「ルイーズさん、お話が!」
そう意気込んだコナンの手を両手で取ったルイーズは、もの凄く真剣な目で頷いた。
「コナン、君を世界一愛らしいお人形にしてあげよう」
「え?」
「その手伝いを、私にさせてくれないか。私の手で、君を美しく飾りたい」
そしてその夜はいけないお人形さんごっこがしたい。
伺うようなコナンの目は、そんなルイーズの浅ましい欲望まで見抜いただろう。その全てを飲み込んで、彼はとても嬉しそうに微笑んだ。
「はい! 夫婦の共同作業みたいですね」
「! 必ず優勝しよう!」
「あの、優勝ではなくて三位くらいを狙いたいのですが」
困ったコナンが小さく笑い、ルイーズをベッドへと座らせて自分は床に膝をつく。首を傾げていると、彼は困った顔でルイーズの股ぐらに触れた。
「!」
「大変な事になっていますね。これなんとかしないと、夕飯行けませんよ」
慣れた手つきでズボンの前ボタンを外し、熱く滾る部分だけを取り出す。そして愛しそうにそこを撫でる手つきの柔らかさに、ルイーズは暴発寸前だった。
「まずは、収めてしまいましょう。お口で、いいですか?」
可愛い上目遣いにほんのりと染まる頬。その可愛さだけでもうイケる気がする残念なルイーズは早漏疑惑をかけられるくらいあっけなく陥落したのだった。
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