ミスコン開催!

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ミスコン開催!

 ミスコン参加者がどうにか衣装とメイクを終えてこっそりとラウンジへと入ると、そこはなんだか異様な空気だった。ザワザワしているのだが一つ一つの声は小さいのだ。 「何があったのでしょうか、オスカル様?」  自身も女装したオリヴァーが場の異様さを感じ取って司会のオスカルに問うと、彼はとても困ったように事の経緯を話してくれた。 「……知らぬとは言え、勇敢な子ですね」 「クラウルが必死すぎてさ。しかもゼロスまで流されちゃったから変な空気になっちゃって。実際、あの後から場がざわついて仕方が無いからフリータイムになっちゃった」 「ご苦労様です。では、後はこちらで引き継ぎますね」  とても舞台に再び注目を集めるのは難しい空気感だが、オリヴァーはヒールを鳴らしながら舞台へと向かい、持っていた鞭でパァァン! と床を鳴らした。  ビクリッと音に驚いた隊員達の目が舞台に釘付けになる。オリヴァーは大胆に胸元を開けた赤いドレスを纏い、足下は深くスリットが入ってチラチラと白い美脚が見える。大きめのイミテーションの宝石をちりばめた彼は高級娼婦そのものの姿だった。 「あれって……女優のアルテミシアが今やってるオペラの衣装じゃ」 「ってか、アルテミシアかと思った」  皆オペラを見に行くような者ばかりではないが、この姿のアルテミシアは知っている。なぜなら街の劇場や酒場にも彼女のポスターが貼られているのだから。 「何をざわついているのです? この私が前に出たというのに、他に気を散らすなど罰が当たる。この鞭で叩かれたいのかい?」 「滅相もございません、女王様!!」  視線が一気に舞台に引き戻されたのは良かった。だが、既にオリヴァーが全てをかっ攫っていないか? という疑問は大いにあった。 「……俺、あの空気の中で出て行くんですか?」  第一師団でも綺麗どころと言われている四年目のミックが、今にも泡を吹きそうな顔色で他の隊員達に言うが、こればっかりは仕方が無い。全員が「南無南無」と手を合わせた。 「さて、仕切り直しましょう。これより、第一回騎士団ミスコンテスト開催です! 全員、入場時に紙を渡されましたね?」  オリヴァーの呼びかけに、その場にいる全員が紙を取り出す。 「今から十人のエントリー者が順に出てきます。皆さんはどの番号が美しかったかを、全員見た後で三つ書いていただきます。順位をつける必要はありません。なお、同一の番号を同じ紙に書いても無効ですので、お間違いのないように」  ルールが伝えられ、全員がやんのやんのと声を上げる。直前のフリータイムでお酒の入った彼らのノリの良さはある意味恐ろしいものだ。
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