544人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
「温まってきましたね。続いて、エントリーNo.3! リカルド!」
そのコールと共に出ていったリカルドを見た場の空気は、明らかに今までとは違った。
彼は深い緑色の、王侯貴族が社交界で好むタイプのドレスを選んだ。深いグリーンは裾が長く、腰のラインから半円に美しく広がる裾には金色の造花が縫い止められ、スカート部分はアシンメトリーにタッグが寄せられ、そこは金のリボンがつけられている。
髪はそのままショートスタイルで、白い髪に緑の花の髪飾り。その髪飾りには金色の繊細な細工の蝶が羽を休めている。
「リカルド!」
驚いたチェスターが声を上げると、リカルドは正面で彼を見つけ、ふわりと儚げに微笑む。その姿がまた観客を興奮させるようで、大いに湧いた。
が! 一番湧いたのは彼が後ろを向いた瞬間。少し大きめに空いている胸元と背中の美しさと項に、男共から「おぉぉ!」という声が漏れた。
「いい感じですね。それではこのままエントリーNo.4! ディーン!」
コールで出てきた第一師団のディーンは、すっかり身長も伸びて顔立ちも綺麗系へと変貌した。初期の幼さが抜け、美人になったのだ。
そんな彼が選んだのはあえての純白のウエディングドレスだった。
すらりと伸びた身長や長い腕を見せつけるように袖の無いIラインドレスはスッキリとシンプルでありながらも、エレガントさと洗練された美しさを作り出している。
光沢のある生地にプラチナの刺繍がされ、左腰には大きく作ったリボンがある。裾がやや広がる、エレガントなものだった。
「ねぇ、ドゥーこれ知ってたの? ……ドゥー?」
ドゥーガルドの隣にいるハリーが顔を覗き込むと、ドゥーガルドは顔を真っ赤に……
「ドゥー、鼻血出てる!!」
「だらしないなぁ」
ハリーとは逆隣にいるレイバンがハンカチを手にすると、それをドゥーガルドの鼻めがけてぶち込む。
それでもドゥーガルドは舞台から目を離せないようで、もの凄く真っ赤なまま瞬きもしていない。
「ドゥーガルド先輩!」
「!」
舞台上のディーンが声をかける。それにビクリと反応すると、その手元めがけてディーンは手にしていたブーケを投げる。狙い通りドゥーガルドの手元に落ちたそれを、皆が「おぉぉ!」と拍手を送った。
「貴方の為のウエディングドレスです。気に入ってくれましたか?」
「う、ぁ…………うぉぉぉぉ!」
何かが爆発したのか、ドゥーガルドは突如雄叫びを上げて壇上へと上がり、ディーンをお姫様抱っこするとそのまま会場を出て行った。
「…………あー、ディーンはしばらく帰ってきませんね。なお、彼の目的は達成された様子です」
ディーン曰く、『ドゥー先輩に獣のように貪られたくなりました!』だったそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!