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「えー、俺の妹ではないので、犯罪に走らないように。続いてはエントリーNo7! 人妻なのでお手を触れないようにお願いします! コナン!」
コールで呼ばれたコナンは、まさに生けるお人形だった。
小さな体に纏うのはピンクと白を基調とした、プリンセススタイルのドレスだ。
フロント部分は白い生地が使われ、レースとリボンをふんだんに使っている。
スカートはボリュームのあるオーバースカート。白い何段ものレースを使ったボリューミーなスカートの上はピンク色だ。
肩はエレガントな丸みのある作りで、そこから肘まではむしろほっそりとしている。そして肘から先は豪華なベルスリーブで、ピンクの外側と白い総レースの豪華なもの。
金色のゆるい縦巻きのカツラに幼さを強調するようなピンクのボンネット。不安そうに揺れる瞳がまた、少女らしく映る。
これを見たルイーズの興奮度合いは、天国並だった。何せ嫁が可愛い。可憐でありながらもキュート。最初、衣装を着せるのはオリヴァーの仕事だと言われた時には反発もあったが、我慢したからこそのときめきがここにある。
正面にきたコナンは不安そうに辺りを見回している。その不安そうに揺れる瞳も可愛い。今すぐ抱きしめたい。
やがて、そんなルイーズをコナンが見つけた。そしてとても嬉しそうな、愛らしい笑みを見せた。
「僕は、貴方の為のお人形です」
勿論これはルイーズに向けた言葉だった。だが、酔っ払いな一般隊員も萌えた。
「俺のお人形に是非!」
「バカ! ルイーズ様の嫁だぞ」
「あの子なら俺、お人形遊びしたい」
「変態だぞ!」
場がガヤガヤと五月蠅いが、とりあえず「お人形遊び」と口にした奴は後で絞めようか。
不穏な事をルイーズが考えている間に、コナンは去ってしまった。
「えー、アレは近衛府副長ルイーズの嫁なので、鞭でたたきのめされたく無ければ手を出さない事です。さて、続いては……! 期待していてくださいよ! エントリーNo.8! ベリアンス!」
コールに、ベリアンスはドキドキしていた。だが彼も一隊を率いた隊長だったのだ。拳を握り、一歩を踏み出す。明るいランウェイに出た途端、会場は湧いた。
上は比較的見慣れている感じがした。白いワイシャツに青を基調としたダブルのジャケット。腰元は少し細めに絞ってある。
だが会場が湧いたのは、そこから下。膝上の超ミニスカートは、少しかがんだだけでも見えてしまいそうな危うさ。そこから見えるガーターベルトが、白いニーハイを繋いでいる。靴は編み上げのロングブーツだ。
腰には革の剣帯をつけ、そこに煌びやかな細い模造剣を差している。更に肩には膝裏まである白いマントを、金のマント止めで止めている。
髪は片方を編み込み、そこにシルバーのバレッタをつけ、凜とした騎士の顔をして歩くベリアンスは、正面に立ってドキリとした。
アルフォンスはこのパーティーには参加していないはずだ。夕飯の当番だったから、早めに休むと言っていた。確認したのだから間違いないはずだ。
だが確かにいるのだ。会場の隅の方でジェイクと二人でこちらを見ている。腕を組んだ彼は壇上のベリアンスを見てにっこりと口元に笑みを浮かべる。だが目は笑っていない。
怒っている?
不安がこみ上げるが、既に人前だ。ここで中途半端にしては余計に無様だ。
ベリアンスは腰の剣を一気に抜き去る。軽い木材を使い、それにメッキをした模造の剣はそれでも雰囲気は十分だ。抜き去った剣が天を突く。
「我ら、騎士の誇りを胸に悪を砕く! 誇り高き者達よ、我に続け!」
「おぉぉぉぉ!!」
ベリアンスの鼓舞に呼応するように、隊員達が声を上げる。
ベリアンスは剣を下ろし、出陣を思わせマントを翻して出てきたのとは反対の舞台袖に引っ込んだ。
「ベリアンス、かっこよかったよ!」
そこにいたオスカルが声をかけてくれたが、ベリアンスはそれどころではない。舞台袖に引っ込んだ途端に膝から崩れて、脳内がちょっとしたパニックだった。
「ベリアンス?」
「……怒られる」
「え?」
「どうしよう、怒らせてしまった」
それがとても怖くて、ベリアンスはちょっと涙目になってしまった。
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