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★コリー・ブライトマン編
ミスコンは盛り上がったんだろう。舞台から降りてくると、知ってる人も知らない人も声をかけてくれる。それに応え、不安そうなユーインの手を引いて、コリーは仲間達の所に戻ってきた。
「たっだいまー!」
「おう、お帰りコリー! 可愛かったよ!」
「だろー!」
女装姿のまま胸を張るコリーに、ジェイソンはうんうんと頷く。
ジェイソンはいい奴だ。いいところのお坊ちゃまなのに全然飾った感じがなくて、凄く頑張っていて、付き合いも良くて明るくて、とにかく一緒にいて楽で楽しい。
「二人とも、お疲れ」
「わぁ! 気が利くじゃんアーリン!」
少し席を離れていたアーリンは二人分の飲み物を持って手渡してくれる。そしてとても自然に、ジェイソンの隣に戻った。
この二人、付き合っている。あれだけ反発していたのに、纏まったら夫婦みたいだ。
ジェイソンはますます強くなって逞しくなっているし、アーリンは綺麗になってしっかり者。言葉にしなくてもコンビを組ませたら自然と動いていて、どこかで繋がっているんじゃないかと思う。
そしてアーリンはとにかく、雰囲気が柔らかくなった。
「それにしてもコリー。お前、何が目的でミスコン出たんだ?」
リーの問いかけに、コリーはビクリとする。一瞬意識がユーインに行きそうになったけれど、どうにか頑張って我慢した。
そう、コリーがこのミスコンに参加した理由は、ユーインの為だった。
コリーはずっと、ユーインから相談を受けていた。同じ第二師団だし、仲が良かったから自然とそんな感じだ。
そのユーインが深刻そうな顔をして相談してきたのは、二ヶ月くらい前だった。
「はぁ? 嫌われたかもしれない?」
コリーの言葉に、ユーインは泣きそうな顔で何度も頷いた。
ユーインには、半年くらい前から好きな人がいる。名前は教えてくれなかったが、本当に好きなのは伝わった。
最初は他愛ない話を聞いていたけれど、二ヶ月前はとても辛そうだったのだ。
「僕、が……悪くて」
「どうしたんだよ」
「恥ずかしく、て。触ろう、としてくれた、のに、よけちゃって」
「あー」
拒んだみたいに見えたってことか。
「どう、しよう……あれから、触、ろうとしてくれ、ない」
純粋に、好きなんだって伝わる。触られるの、本当は好きなんだろう。
元々あまり、人付き合いの上手い方では無いユーイン。話し方も少し個性があって、本人もそれを気にしている。触られるのも怖いそうだ。だから、小柄な人が多い第二師団はとても安心するとも言っていた。
なんとかしてやりたい。そんな気持ちでいて、一ヶ月くらい前。ミスコンの張り出しを見て、これだと思った。
ユーインを誘って、景品のレストランとか取れたらそれを使って、二人で食事に行ってくればいいと思ったのだ。
話したら、ユーインも頷いた。だから二人でとにかく出てみようと、チャレンジしたのだ。
けれど多分、無理だろう。先輩達があまりに本気すぎる。
「コリー?」
「あ……と。高級レストランって、行った事ないから!」
伝えると、ジェイソンもアーリンも、更にはスペンサーまで笑った。
「コリーらしいな」
「んな!」
「まぁ、オペラだ室内楽だと言うよりは、納得の理由だと思うけれど」
「スペンサーまで!」
ぐぬぬぅ! となっていると、アーリンだけは真剣に肩を叩いた。
「テーブルマナー、覚えているか?」
「何の心配してんだよお前ら!!」
失礼すぎる仲間達のその裏で、ユーインだけは控えめな笑みをみせ、その一方でリーを気にしていた。
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