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いけないシスターに誘惑されました(ファウスト×ランバート)
無事ミスコンが終わり、ファウストを伴ってランバートはウェインの部屋を訪ねた。
コンコンっとノックをすると、当然のように中からアシュレーが出てきて…………ランバートを見て盛大にフリーズした。
「アシュレー様、俺ですよ」
「あっ、あ……。すまない、寝ぼけて幻覚でも見ているかと思った」
「お疲れ様です」
ウェインが熱を出してから、アシュレーはほぼつきっきりで看病している。以前ウェインが怪我を負った時の後遺症か、もの凄く心配性で過保護になっているとか。
戸口からチラリとベッドを見ると、ウェインは穏やかな寝息を立てているようだ。
「夕方に熱が下がって、食事も少し食べられるようになってな。調子に乗って肉が食いたいと我が儘を言って、夜になって気持ち悪くなって」
「ウェイン様らしいと言えば、らしいですね」
「まったく、落ち着きがない」
溜息をつくアシュレーだが、本心では心配しているのだと分かる。それが微笑ましくて、ランバートは小さく笑った。
「熱はあるが、安定はしている。昨日も夜間に上がったから、今夜もそうかもしれないが」
「今日の宿直はバーニー医師だそうです。医務室にいると日中仰っていましたよ」
「あぁ、俺も聞いた。何かあったら直ぐに知らせに来て欲しいと」
バーニー医師は医療府所属の外科医だが、当然内科の勉強もしている。だが、彼が本当の実力を発揮するのは生きている人間ではなく、検死だ。解剖医であり、病理学者でもあり、死体の復元などにも携わるそちらのエキスパートだったりする。
当人は人当たりもよく大らかで、大抵の事に驚いたりはしない。年齢も上の方だから、ドンと構えている感じだ。
「ところでその格好で、出たのか?」
アシュレーがランバートの姿を上から下まで見る。若干顔が引きつってもいた。
「似合いますか?」
「本物のシスターでも紛れ込んだかと思ったぞ」
「まぁ、そう見えるように近づけてありますからね」
一瞬、アシュレーの目がランバートの後ろにいるファウストへと向いたが、ファウストは知らん顔をした。
「あの、こちら賞金のスキー旅行です。今シーズンであればOKだそうです」
「すまない。だが、本当にいいのか?」
「はい、勿論。その為に出場したのですし、ウェイン様が元気になってくれればそれでいいですよ」
騎兵府のムードメーカーであるウェインの元気がないと、隊もなんだか萎れたようになる。逆に彼が元気で明るく笑っていると、どんな状況でもみな明るく前向きだったりするのだ。
ランバートから賞金の封筒を受け取ったアシュレーは、申し訳なさそうにしている。そして、「土産を奮発する」と行って礼を言い、部屋へと戻っていった。
ランバート達も部屋に戻った。ファウストの部屋は珍しく少し散らかっている。それというのもこの年始は少々行くところがあるのだ。
弟のルカ夫婦に初めての子が生まれたのは、年末の事。ウルバスからその知らせを伝えられたファウストとランバートは、会うのをとても楽しみにしている。だが、生まれて間もなく祝いに行ってはメロディも休まらないだろうと、我慢したのだ。
その間、浮き足だった二人は生まれた子とメロディへの贈り物をどうするか、休みの度に街を歩いてあれこれ見ていた。
子供には温かくて柔らかいおくるみと、よだれかけをランバートが選んだ。どちらも複数持っていて邪魔になるものではないし、おくるみは冬場の毛布代わりにもなる。温かな日差しを思わせる柔らかい黄色のおくるみは触った瞬間にランバートが惚れた。
ちょっと迷ったのはメロディへの贈り物だ。形の残るものも考えたのだが、今は体が大事だ。お産は夜通しだったようだし、産後はなにかと体の自由がきかない。
それなら体にいいものを贈ろうと考えた二人は、健康食を扱う店を三軒ほどはしごした。
そこで、鉄分も一緒に取れるというお茶を購入した。なんでも眠れなくなる成分が入っていないとかで、小さな子供でも飲めるのだとか。
他にはドライフルーツの詰め合わせを選んだ。これなら日持ちもするし、砂糖などは使っていない。じっくりと干して作ったドライフルーツは素材だけで十分に甘く美味しく、栄養もあると言うので選んだものだった。
それに加え、赤ちゃんと色違いの肩掛けも選んだ。母体を冷やすのはよくないし、まだまだ寒い季節が続くのだから。
現在ファウストの部屋には、これらの贈り物が置かれていて、更にヒッテルスバッハにも挨拶をするからと手土産もあり、服装をどうしようかと悩んだ結果の衣類も散乱している。
「凄い状態だな」
「片付ける」
「明日でいいよ、俺も手伝うし」
明日はゆっくりと過ごすつもりだ。シウスは明日から温泉に行くし、オスカルは実家に帰る。クラウルも明日は挨拶回りをするので、団長不在にはできない。こちらの挨拶回りは明後日の予定だ。
不意に後ろから手が伸びて、肩にのしりと体重がかかる。肩に腕を置いてもたれられると流石に重い。
「ファウスト重い」
しかも、ばっちり尻に硬いモノが当たっている。
「……当たってるけど」
「当ててるんだ」
「変態」
「シスターのくせにセクシーなお前はどうなんだ」
恨み言のように言われ、ランバートは苦笑する。そしてわざと尻を上下に揺すり、硬く当たっているものを刺激した。
「っ」
「勿論、誘惑するつもりだったんだよ」
「他も誘惑されてなかったか?」
「軍神の嫁に手を出す強者がいるとでも?」
くすくす笑って問えば、ファウストはなんとも言えない苦い顔をしている。明らかに納得はしていない様子だ。
始まる前は余裕だったのに、今ではまた心配を拗らせている。この人の目にはいったい自分はどれだけ魅力的に映っているのだろう。
笑い、腕の中で体を反転し、首に抱きつく。そして頬に触れるだけのキスをした。
「俺が誘惑したいのは、アンタだけだよ。この服だってファウストを誘惑するために選んだんだからさ」
「俺は女装が好きなわけじゃ」
「タイトな格好、好きだろ?」
なんせ数年前、マーメードドレスの時も燃え上がったのだから。
ファウストは決まり悪い顔をするが、否定はしなかった。できなかったのだろうが、それが余計に面白い。
「チラ見せも好きだけど、こうして体のラインが見える格好も興奮する」
「……お前であればそれだけで興奮はする」
「年中発情期みたいな発言は控えてください、ファウスト様」
いきなり仕事モードで切り返したランバートに、ファウストはビクッとして項垂れた。
何にしてもランバートの思惑は成功している。ファウストはこの姿に誘惑された。そしてここから、とっておきのサプライズが待っているのだ。
「なぁ、ファウスト」
「なんだ?」
「そろそろ苦しいから服、脱ぎたいんだけどさ。脱ぐの手伝ってくれないか?」
コルセットの紐は、実は後ろ。誰かが紐を緩めてくれないと脱げない。
ランバートはシスター服のボタンを一つずつ外していく。そうして上半身だけを脱ぐと、ファウストに向かって背中を見せた。
「これ、取って欲しい」
ファウストの視線が舐めるように見つめているのを感じる。獲物を狙うような視線だけでもランバートはドキドキする。その気配がゆっくりと近づき、リボン結びを解いた。
一気に体が楽になるが、これでは脱げない。紐を一つずつ緩めていかなければいけないのだ。
少しずつ紐がゆるくなって、コルセットと肌との間に隙間ができる。作り物の胸が取れると余計に胸元はスースーした。
そこに当然のようにファウストの手が滑り込んで、若干汗ばんだ胸元を撫で回し始めた。
「んぅ」
「しっとりしている」
「案外暑いからさ、汗ばんでる。拭くから」
「このままでいい」
「でも、汗臭いよ。その為に桶に水持ってきてたのに」
こっちの部屋に泊る気満々だったから、タオルと桶と水を用意していた。水に入れるオイルも勿論だ。
だがファウストはそんなモノを使わせる気はないらしい。撫でられて少しその気になった乳首を、ピンと指で弾いた。
「っ」
「お前の汗の臭いに興奮する。そのままでいい」
「……ファウストがいいなら」
首筋に鼻を埋めて臭いを確かめるファウストに苦笑して、ランバートはされるがままに身を任せた。
コルセットの隙間に入れた手はとても器用に胸を揉む。揉む胸もないのに、上手に乳首を摘まんだり転がしたりだ。
勿論これだけで達したりはしないのだが、間違いなく気持ち良くて興奮する。微かに乱れる息を吐くと、ファウストはとても満足そうにキュッと強く摘まんだ。
「んぅ!」
「ぷっくりと腫れている」
「あまりされると痛くなるんだけど」
「後で口で癒やしてやる」
「それ、余計に刺激されるからな」
くつくつと楽しそうに喉元で笑うファウストの機嫌も直ったようだが、困った事も起こっている。
腰に片腕を回して逃げられないようにして、後ろからひたすら乳首攻め。ジンジンしている部分が少しだけ痛い。だがそれ以上に、タイトスカートの中がまずい。
下を見ると、僅かに形が浮き上がっている。それはそうだ、これだけエロい事をされているのだから反応して当然なのだ。ただ、もの凄く恥ずかしい見た目になっている事を除けば通常通りだ。
「随分育ってるな」
「見るな!」
分かっていてやっているファウストを睨むと、彼は楽しそうにして手を伸ばし、スカート越しに大きくなり始めた部分を撫で始めた。
「こら! んっ!」
「女装が好きなわけではないが、見た目のインパクトは凄いな」
「こら、触るな!」
ダイレクトな刺激に前屈みになってくる。後ろから悪戯を仕掛けるファウストはとても楽しそうにしている。だが、される方はたまったものではない。
「おねがっ! 服脱がせて」
「自分で脱げるだろ?」
「意地悪するな! あっ、やぁぁ」
服越しに先端の方をクリクリと撫で回され、揉み込まれて腰骨が痺れてくる。せり上がるような快楽が行き場を探している。
「もっ、本当に! このまま出したらヤバい! ファウスト、いい加減にしろ!!」
焦って怒鳴りつけると渋々とファウストが離れる。その間にどうにかスカートを脱いだが……シミが出来てしまった。汚しても構わない。むしろ大いに汚してくださいとオリヴァーは言っていたが、流石にご遠慮願いたい。
コルセットの方もはずそうとしたのだが、こっちはまだ外せるほどには緩んでいない。四苦八苦する姿を少し離れてファウストが楽しそうに眺めている。
「性格悪いぞ」
「お前のそういう姿は珍しいからな」
「いい加減外したいんだけど」
ぶぅ、としていると仕方がないという様子でファウストは紐を緩めてくれる。そうしてどうにか外すと、締め付けが無くなってスッキリした。
その項へと唇が落ち、再びファウストの手が手持ち無沙汰なのか胸や昂ぶりへと触れてくる。のしりと背中に感じる体重や肌に触れる髪のくすぐったい感覚。体全部で甘えているような感じもして、受け入れてしまうのだ。
「どうしたのさ、ファウスト。甘えん坊?」
「お前に触りたかった」
「触ってるだろ」
「会場でお前を見て、連れ去りたくなった」
苦しげに吐き出される言葉は本物。ランバートだって感じていた、ステージに注がれるこの人の熱い視線を。呆然と呆けたような驚きの視線と同時に感じる独占欲を。
その視線が欲しかったなんて、言えばこの人はどんな顔をするのだろうか?
「周囲に嫉妬した」
「知ってる」
「狭量は自覚していたが、最近随分ましになったと思ったんだがな」
「本質はそう簡単に変わらないってことだよ」
「お前、どうして嬉しそうなんだ?」
「ふふっ、なんでだと思う?」
ファウストの嫉妬が嬉しいなんて、言えばこの人はなんて返すのだろうな?
手が悪戯に触れてくる。ぷっくりと腫れた胸を押しつぶして、捏ねて撫でて。触られすぎて少し痛いのと気持ちいいのが混ざり合ってくる。
「ファウスト、少し痛い」
「では、こっちはどうだ?」
「んっ!」
ぬるりと大きな手が昂ぶりを撫でて扱き上げてくる。すっかり熱くなっているそこは既に先走りでぬるぬるで、見た目にかなり卑猥な状態だった。
背中に感じていた重みが引いて、ファウストが前へと移る。そしておもむろに跪くと、躊躇いなくランバートの熱くなったものを口腔へと収めてしまった。
「んぅ! ファウスト?」
「たまにはしたい」
「いや、したいって!」
嫌いなわけではないし、ベッドでは時々してくれる。けれど立った状態でというのはあまりない。
一国を守る軍神が、膝をついて口淫なんて卑猥すぎる光景にクラクラする。腰が痺れて……ってか、この人上手いんだ、何故か。
たっぷりと唾液を絡めてしゃぶられて、筋に舌を這わされて震えた。ファウストは片腕をランバートの腰へと回していて、倒れないように支えている。だがそうなると必然的に深く咥えられていて、喉の奥に擦れて余計に我慢ができない。
「ファウスト、ベッド……」
「このままだ」
「もっ、立ってられない」
「出していいぞ」
「そんな! あっ、はぁん……っ」
「いいと」言われてそう簡単に「はい」となるか!
だが、攻め立てる手は緩まらない。それどころか段々と巧みになっていく。先を転がされながら根元を手で扱かれ、上目遣いに楽しそうにされて。こんなの、どうしていいか分からない。
「もっ、イッ……んぅぅ!」
どうする事も出来ずに陥落したランバートの体を支えながら、ファウストは上手く全てを飲み下していく。それどころか腰に回していた手で尻を撫でて刺激して。絶頂の余韻どころか次の行為に期待して、体はどんどん熱を持っていく。腹の中が酷く寂しくて、ランバートはファウストの頭に手を置いたまま荒く息を吐いた。
「も……バカ……」
「気持ちよかっただろ?」
「腰砕ける」
「それはなによりだ」
頭に置いた手を取られ、そのまま抱きかかえられてベッドへと移されたランバートの目の前に、優しく笑うファウストがいる。愛しげに見つめられ、やり直しみたいなキスをされて……甘やかされてふわふわする。
ギュッと首に抱きついたランバートの頭を、ファウストは大切そうに撫でた。
「どうした?」
「愛されてるなと思って」
「当然だろ」
「甘やかされてダメになりそう」
「お前がか? それはないだろ」
「どうかな?」
「ないな。お前はどこまでも凜と立っていられるさ。そんなお前だからこそ、俺は甘やかしたいんだ」
優しい笑みと柔らかな声で言われたら、途端に体の奥の方が熱くなった。照れたんだと気づいたらそれは余計で、心臓がうるさくてしかたがない。落ち着かなくて余計に抱きついたら、ファウストは笑っていた。
嫌って程火照った体を持て余し気味のランバートは、ファウストの服も丁寧に脱がせていく。制服ではないので脱がせるのも楽ちんだ。
ボタンを一つ外すごとに現れる引き締まった体はいつ見ても見惚れる。触れても確かな筋肉の硬さと形の良さ。全てのボタンを外して出てくる腹筋の割れ目。適度に絞っている腰回りはとてもシャープで自然だ。
「そんなに珍しくはないだろ」
「いつ見ても理想的というか、見惚れるんだよ」
男なら……というか、騎士なら誰もが憧れ、目指すラインを体現しているだろう人だ。
更にシャツを脱がせれば盛り上がった上腕に、筋肉の筋が僅かに分かる腕。
ズボンはファウスト自身が脱いでくれたが、それも見ている……んだが。
「下半身、がっかりな光景だな」
「おい!」
引き締まった尻にシャープな足つきはやはり理想なのだが、その中心にくっついているものがかなりご立派だ。まさに今から犯してやろうという気満々なのだ。
我慢、させたしな。思い切り分かってて煽ったんだしな。
苦笑したランバートが苦しげなファウストの昂ぶりに触れると、とても熱くなっていた。
「あまりするなよ、我慢しっぱなしなんだ」
「口でしようか? お返し」
ファウストのフェラを思い出して、一瞬ゾクリと痺れが走る。そして愚息も力を取り戻した。なんとも現金なものである。
ランバートの提案を、ファウストは首を横に振って断った。だがその代わり、太股を撫でられて開いた足のその先、柔らかな後孔へと指が触れた。
「柔らかいが、もう少ししないとな」
「潤滑油だけ足せば大丈夫だよ」
「ダメだ。切れたら辛いし、今日は一度で収まりなんてつかないぞ」
ベッドサイドの引出しから香油を取り出し纏わせて、節くれだつ指が二本ゆっくりと入ってくる。違和感と圧迫感はあっても痛みはない。ここは既にファウストだけを覚えている。
ヌルヌルとした抽送は容易で、関節の部分が通る度に微かにゾクゾクとした感覚が走る。自然と息に熱が混じり、時折浅い部分を擦られてブルッと震えた。
「ファウスト、もういいから」
「だから」
「たまには、食い散らかされるくらい余裕のないファウストも見たい」
本音がポロリと零れる。ランバートの言葉に、ファウストはとても驚いた顔をした。
「ファウストが優しいのも、俺の体を気遣ってくれるのも嬉しいし、愛を感じるけれど。でもたまにはそんな余裕一切ない、貪り尽くされるような夜にも愛情を感じるよ」
だから誘惑したなんて言ったら、この人はどんな顔をするのだろうか。
そっと頬に触れて、ラインをなぞった。驚いた黒い瞳をジッと見ながら唇を重ね、ねっとりと絡ませて。至近距離で見つめたら、この人から強い欲望を感じた。
ずるりと指が抜けて、軽く後に倒される。両膝の裏に腕が回って思い切り開かれながら、ランバートは一気に貫かれた。
「んぅぅぅぅ!」
瞬間、中だけでイッた。腰から頭、足先まで一瞬で走った痺れにつま先がギュッとなる。ヒクンと震えた体は、だが何の遠慮もなくそのまま揺さぶられ、熱い焼き杭のような剛直が最奥を抉り上げてくる。
「あん! はっ、あっ、あぁぁ!!」
「煽りすぎだ、バカ者……っ! くそっ、たまらない」
「あぁぁ!」
香油を足しながらパンパンと打ち付けるように腰を使われ、その度に中が締まる。ずっと中イキを繰り返しているから、頭の芯が痺れて朦朧として、ただ喘ぐしかできない。
それでも幸せを感じる。余裕のないこの人を見るのは久しぶりな気がする。常時は比較的穏やかなこの人から余裕が消えた。それだけ、夢中になってくれている。
少し強く頬に触れる手は、しっとりと熱い。触れる唇も、潜り込み絡まる舌もとても熱い。このまま溶け合ってしまうのではと思える程に荒々しく交わりあうランバートを、見つめるファウストが、とても憎らしい目をした。
「こんな風に抱かれて、嬉しそうにするなお前は」
「へぁ?」
全部が痺れて気持ち良くて、自分が今どんな顔をしているかなんて分かる余裕はない。けれどこれも一つ幸せなのだから、嫌な顔はしていないだろう。
生理的な涙に濡れる頬を、ファウストは大きな手で拭っていく。貪りながらも優しさを見せてくれる。余裕なんてない顔をしているのに。
手を伸ばして触れた背中はしっとりとしている。角度が少し変わって、余計に腹の中を掻き混ぜられて目の前がチカチカした。
その度、内壁がギュッとファウストを締め上げる。入るのは許すが、抜けるのは許さないと絡みついて搾り取る。ギラギラした瞳が歪み、眉根が寄っている。熱い息を吐くファウストを感じて、余計にランバートはファウストを離せない。
「っ! ランバート!」
「んぅ! いぃ、よ? ファウスト、欲しい……あっ、ぅあぁぁ!」
熱い杭が中を掻き回して気持ちのいい部分を抉り上げ、最奥にぴったりと押し当てたまま熱を注ぎ込む。まるで孕ませるようなその行為に、ランバートも全身を痙攣させながら喜びを感じてぴったりと抱き合った。
熱い腕の中、心臓が驚くくらい早鐘を打っている。息も続かないまま荒々しいが、それはお互い様だ。
しばしの時間、お互いに動けないまま抱き合っている。腹の中で最後の熱が名残惜しげに放たれてようやく、ファウストが身じろぎキスをくれる。まだドロドロに熱いて、気持ちがいい。
「悪い、辛かったか?」
「愛されてるって感じた」
「……いつもは、物足りないのか?」
「ううん、好き。でもたまに、こういうのがいい日もあるってだけ」
少し体は怠いけれど、まだ大丈夫。このために日々鍛錬をし、体力をつけてきている。この人の欲望全部を独り占めしたいランバートの秘密特訓だ。
ファウストの腰に足を絡める。抜けてしまわないようにと、おねだりも兼ねてだ。
ファウストもそれにちゃんと気づいて、片手で顔を押さえて溜息をついた。
「お前なぁ……」
「だめ?」
「俺は願ったりだが、休みなくしたら明日起き上がれないだろ」
確かにそうだ。この人の体力と精力はランバートよりもずっと強い。こうしたら抱き潰される事は目に見えている。明日はベッドの住人だ。
だが、ランバートはにっこりと笑って足をもう少し強く引き寄せた。
「そうなったら、ファウストが俺の看病してくれるだろ?」
嬉しそうに笑って言ったランバート。ファウストは面食らった顔をした後で、照れて赤くなった。
「決まりだね」
だって明日は一日中、お休みなんだから。
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