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幸せのお裾分け(オスカル×エリオット)
オスカルの実家に新年の挨拶にきたエリオットは、実に幸せな気持ちでオスカルの寝室にいる。それくらい、今年は沢山の幸せな報告があった。
まず、シェリーの所に二人目の子供ができた。夏辺りに出産の予定らしく、幸せな彼女を見ているとこちらまで幸せな気分だ。
更にオーレリアが婚約者を連れてきた。相手は意外だったが、案外お似合いだと思う。
「それにしても、オーレリアまで婚約なんて。ちょっと意外だったな~」
ちょっと拗ねた様子のオスカルがワインをチビチビ飲みながら言うのを、エリオットは笑って見ている。どうやら兄としては少し複雑な気持ちらしいのだ。
「お似合いだと思いますよ、オルトンさん。誠実そうで、優しそうで」
「そこは別に、気にしてるわけじゃないよ。でも、ちょっと気が弱そうだよ?」
「そうですか? 気の強い相手では逆にぶつかってしまうように思いますが」
オーレリアがかなり気が強い。同じタイプでは喧嘩になってしまうだろう。
その点オルトンは相手に譲る事が出来る優しさがある。終始オーレリアの様子を見て、楽しそうに笑っていた。でも、ちゃんと会話には加わるし、そういうオルトンをオーレリアも理解しているようだった。
「彼女はしっかり者ですが、相手を立てない訳ではないでしょ? 良妻だと思います」
「それは、まぁ……。でもさ、ボリスのお兄さんってのが驚きすぎる」
「それは私も驚いていますよ」
まったく似ていない。むしろ腹違いとかでも納得ができる。そのくらい、オルトンとボリスは結びつかなかった。
ボリスは昔は余り目立たない感じだったが、どうやら猫を被っていたらしい。今のほうがよほど活き活きしているが、存在感がグッと増した。そして性格がかなり違った。
ランバートの話ではとんでもないサディストらしい。ジェームダルへの先行作戦時の事をかいつまんで聞いたが、かなり驚いた。
オルトンはまったく、そんな様子はなかったが。
「……まさかオルトンも実はそういう人間じゃ」
「それは無いと思いますし、オーレリアさん負けませんよ」
とにかく、よかったと思う。
「よかったで言えばエレナちゃんもよかったね」
「それですよね……」
ニヤリと笑ったオスカルに言われ、エリオットの方は苦笑がもれる。まさか妹とオスカルの弟が……とは、思っていなかった。
「あの二人、僕たちの結婚式とか顔合わせ切っ掛けで親しくなったんだって」
「みたいですね。でもそんなに進んでいるとは思わなくて」
確かに親しそうな二人を見てはいた。だがエレナの方は兄にじゃれつく妹のような顔をしていて、まさか男女の関係になるとは思っていなかった。
エリオットが知らないだけで、なんどかお互いの家に行き来して仲を暖めていたらしいのだ。
「まさかバイロンからプロポーズなんて、思わなかったな。僕も知らなかった」
「バイロンくんも大人の男ですね」
「そうだね。来年くらいを目標に、結婚の予定だって」
「結婚、か……」
ちょっとだけ複雑だ。エレナは未だに可愛い妹で、それが一人の女性として旅立っていく。こちらはどんな顔をしたらいいのだろう。勿論祝福はしているのだが。
「オレンジのカクテルドレスとか、似合いそうだよね」
「アイビーの冠とか?」
「あっ、それいい!」
「バイロンくんは落ち着いたタキシード?」
「白着せたいかも」
「どの色も似合うと思いますよ。かっこよくなりましたもん」
男の顔をしていたと思う。奔放なエレナを温かく見守る様子を思い出すと、彼らも大丈夫だと思えるのだ。
「それにしても、みんな行くところにいったね。ジェイソンもゆるゆるな顔してさ。アーリンの方が緊張でガチガチなの。あれ、今頃ちゃんとフォローできてるのかな?」
そんな事を言うオスカルを、エリオットは苦笑して「さぁ?」と言うに留まった。
アーリンは複雑な状況にいた。西の反乱を招いたルースの親族で、それを理由に生家を追われ、人足として肉体労働を強いられ、更には男娼としても働いていた。身も心も傷つき、ボロボロの状態で騎士団に入ってきた。
その為か、入団直後はとにかく周囲を威嚇していたし、卑屈な部分もあった。とくに同室で成績次点のジェイソンには反発していた。
それが、最初の合宿で急に接近して、今では恋人同士だ。
よかったと思う。尖っていたアーリンの雰囲気が明らかに丸くなり、隊に馴染むようになった。力もよく抜けて柔軟になり、成績も上がった。
ジェイソンもアーリンを得て余計に頑張れているようで、かなり力をつけている。何よりとても楽しそうだ。
「何にしても、みんな幸せそうでよかったです。こちらも幸せを分けて貰った気分です」
騎士団の中も落ち着いてきた。三国同盟は締結し、今後はそれぞれの王家で繋がりを深くしていくだろう。帝国にも王子が生まれたし、ジェームダルには既に六人の子がいる。クシュナートにも二人目の子、姫が生まれたらしい。カールとデイジーも若いから、これから子供はまた産まれるだろう。
婚姻などをそれぞれ結んで、より硬い同盟にしていく。そういう段階だ。
ワインを流し込み、程よく酔いが回る。それを見計らってオスカルが近づいて、とても自然に肩を抱き、キスをしてくる。エリオットもそれに素直に従った。
「分けて貰った幸せを、倍にしない?」
「もう、そんな事を言って」
「嫌?」
「いいえ。ただ、ちゃんと誘って欲しいと思っただけです」
誘われる気はある。昨日もあの後けっこう飲んだし、今日があるからしなかった。でも、気持ちはあるのだから。
オスカルは器用に片方の眉を上げて笑う。そしてとても甘く、エリオットの手の甲に唇を落とした。
「エリオット、好きだよ。僕の気持ち、受け取って」
「はい、私も好きですよ」
王子様がするようなキザな仕草が嫌味じゃない。そんな人にこんな風にされるのは未だに照れるが、今は二人きり。ここの人が物音に乗り込んできたり、他の部屋の音に聞き耳を立てたりする事もない。だから素直に、エリオットは綻ぶような笑みを浮かべた。
だが、これに照れるのがオスカルだ。未だに顔を赤くして、次にはギュッと抱きしめてくる。
「オスカル?」
「僕の嫁が可愛すぎて罪だと思って」
「ジェイソンが乗り移っていますよ!」
素直は美徳だと思うけれど、時に猛毒だとも思うエリオットだった。
オスカルと過ごす夜は、まるで自分が宝物にでもなった気分だ。とても大切に触れられて、ゆっくりと高められていく。指先が肌を滑る僅かな刺激にも熱が上がるのを感じる。
「エリオット、綺麗」
「オスカル、そんな風に触れなくても私は案外丈夫ですから」
壊れ物じゃないんだから、もっと確かに触れてほしい。なんならファウスト達のように激しい一夜も経験してみたい。
ランバートやゼロスは「しんどい」と零すこともあるが、そんなに激しいセックスをしないエリオットからすると少し憧れる。そんな、理性を切ったような交わりも欲しいものだ。
でもこう言うと、オスカルはいつも少し困った笑みを浮かべる。恋人を大事にしたいという彼の優しさやポリシーも感じるから、エリオットとしてもあまり無理も言えないのが現状だ。
「大事な人には大切に触れたいんだけど……物足りない?」
「そんな事はありません! 貴方の気遣いはいつも伝わっていますから」
そんな哀しそうな目で言われるとこちらが悪い気がする。セックスレスな訳でもないし、不満らしい不満だってない。いつも気持ち良くしてもらって、沢山の気持ちも貰っているのだから。
オスカルはエリオットを見つめて何やら考えている。そして、柔らかく目を細めた。
「じゃあ、今日は少し僕の我が儘きいてもらってもいい?」
「え? えぇ、私にできることなら」
「エリオットの事、心ゆくまで堪能したい。付き合ってもらえる?」
……はて、いつもは心ゆくまで堪能していないのだろうか?
だが、ありえる。理性的で優しいオスカルが無意識にでもセーブしていることはありえる。エリオットの事や翌日の仕事を考えて辛くないくらいで止めてくれる。
そのお陰で、エリオットは身体的負担は最小限だと思う。少なくとも翌日起き上がれないなんてことはそうあることではなかった。
今日は新年で、明日は休み。少しくらい動けなくなったところで誰にも迷惑をかけない…………多分!
「勿論、構いませんよ」
「本当? じゃあ……」
近づいてくる唇が額に触れ、頬に触れ、唇に触れる。甘やかしの常套手段みたいなもので、オスカルはこの行為がけっこう好きだ。嬉しそうな顔をする彼を、エリオットは可愛いと思ってしまった。
「大事に大事に、抱かせてね」
少し悪戯っぽい声音と表情を見て、エリオットは改めて体が火照るのを感じた。
唇が胸の上を滑り落ちていく。手が、高級なシルクにでも触れるように撫でていく。その全てが優しくて、炙られるように体が火照っていく。
微かな声を上げ、息を吐いて。エリオットはいつもより優しい触れ方に困惑している。こんなに優しいのに、陶酔するように気持ちがいい。全身が敏感になっているようで、肌が触れあう事すら感じている。
「オスカル? あの、もっとちゃんと触れても大丈夫ですよ?」
「知ってるよ。でも、こういうのもいいなって」
楽しそうにされると食い下がるより他にはない。
手が、脇腹を擽り背へと回って背骨をなぞる。唇は臍の辺りまで降りてきて、チュッチュッと音を立ててキスをされている。
でも、微妙な快楽ばかりだ。胸も、下肢にも触れてくれていない。なのに背を疼かせるようなこの気持ちよさはなんだろう。決定的なものなんてないのに、背中がゾワゾワして落ち着かない。
「エリオット、気持ちいい?」
「気持ちいいです、けど……っ!」
「だよね。触ってないのに、乳首勃ってるし」
「え!」
驚いて自分の体をマジマジと見て、エリオットは恥ずかしさに沈んだ。しっかり触れられたわけでもないのに、硬く尖って色を増している。それどころか愚息もその気になっていて、既に半勃ち状態だ。
「可愛い、エリオット」
「もっ、からかわないで下さい」
「触って欲しい?」
「…………」
ニヤリと笑うオスカルが憎たらしい。ツンとそっぽを向いたエリオットに、焦って歩み寄るのはいつもオスカルから。だから、安心してこういう態度が取れるのだと思う。
「怒らないで。たまには意地悪してみたくなっただけ」
「では、触れてくれるのですか?」
「勿論。だってこんなに、美味しそうなんだもん」
指が硬い乳首を柔らかく摘まみ、コリコリと楽しむように転がす。それだけで強い刺激が体を走って、エリオットは嬌声を上げた。
ぬるい刺激ばかりのなかで、突き抜けるようなこれは一瞬意識を持っていく。チカチカと頭の中が点滅する感じに、エリオットは耐えられない。一度出た声はもう抑えなどきかなくて、掠れた甘え声でオスカルを呼ぶばかりだ。
「可愛い、エリオット。乳首、すっかり感じるようになったよね」
「んっ!」
「もっと、してあげるね」
うっとりと愛を囁くような声音で、怖い事を言われた。「もっと」なんて、耐えられるだろうか。今も十分切羽詰まった感じがある。触れられていない下肢がドンドン熱くなり、腹の中が知っている様に切なく締まっていく。心臓は早鐘を打ち、些細な刺激にも反応している。
そんなエリオットを知ってか知らずか、オスカルの攻めは今日はねちっこい。片方の乳首を口腔に入れた彼は見せつけるようにねっとりと、そして優しく舌先で愛撫をする。周辺や先端は勿論、押し込んだりこね回したり。温かく柔らかな感触がエリオットを溶かしてしまいそうだ。
「エリオット、今日はとても敏感だね。どうしたの?」
「…………」
貴方のねちっこい攻めに出来上がり始めているんです!!
とは、恥ずかしくて言えずに口を閉ざしてしまうが……赤い顔で何かしらを察してはもらえたようだった。
「あっ、ごめん。もしかしてしんどい?」
「そういうわけじゃ……でも、あの……」
「あぁ」
にっこりと微笑んだ人が、もの凄く徐に下肢に触れる。熱く硬くなったソコの筋をなぞるようにツツ……と指先で触れるものだから、ゾクゾクとした快楽が一気に駆け上がって目の前がチカチカと点滅した。
「んっ!!」
「あ…………ごめん」
「っ!」
謝るの止めてもらえますかね!
恥ずかしくてたまらない。ただ撫でられただけで達した事に、エリオットは顔を手で覆ってしまった。不意打ちからの暴発だが、とてもいたたまれないのだ。
「ごめん、けっこう一杯だったんだ」
「謝らないでください! 恥ずかしいです……」
「そんな事ないよ。気持ち良かったんだね、嬉しい」
にっこりと、本当に嬉しそうな顔をしたオスカルが体をずらしていく。そして当然のように白濁で汚れたものを口腔に招き入れ、丁寧に舐めていく。
「んぅ!」
濡れた淫靡な音が響き、腰にまた重い痺れが走っていく。足の指まで力が入っていて、気持ちよさにブルブルと震えが走った。
「ま……イッた、ばかりでっ」
「うん。だからお掃除」
「やめてくださいよ……」
気持ちだけ受け取るのではダメなのだろうか……
だが、これで満足したらしいオスカルはようやく、後孔へも手を伸ばしてくる。香油を垂らし、クチュッという音が漏れるのはいつになっても羞恥心に火を付ける。
指が二本になり、三本になると、慣れた部分が快楽を拾い始めて知らずシーツを握ってしまう。ぬるりと入口の辺りを擦りつける指にも、エリオットは困った声を上げていた。
「その声、好き。ゾクゾクする」
「んっ、ぅん!」
「恥ずかしくて我慢してる声も、好きだよ。でもね……」
指が抜けて、オスカルが唐突にキスをする。それと同時に素早く後孔に己を宛がい、ゆっくりと穿った。
「んぅぅぅ!」
ビリビリと走る快楽に一瞬真っ白で、高い声が押し上げられるようにこみ上げた。が、その全部はオスカルの唇の中へ。ヒクッヒクッと痙攣するようで、同時に中を食い締めるようにしてしまった。
オスカルの眉根が辛そうに歪む。けれどエリオットは、この顔も好きだ。普段は余裕な彼が一瞬見せる余裕のない表情。そこに、剥き出しになった男の色気が見える気がするのだ。
「イッたね」
「あっ、はぁ…………」
エリオットの汗に濡れた前髪をオスカルが手でかき分けてくれる。そして額に愛しそうにキスをした。
「可愛い、エリオット。とろっとした目をして、とても美味しそう」
ペロリと舌舐めずりをする悪戯っぽいオスカル。自身の落ちた髪もワイルドにかき上げた姿を、呆然と見上げた。
「……いつもより、男らしいです」
「あれ? いつも女々しいかな?」
「そうじゃなくて……男前です」
「ふふっ、有り難う。それじゃあ、男らしい僕に沢山翻弄されてね」
言うやいなや、パンッと一気に奥へと入り込んだ楔にまた腹の中が疼く。嬌声を上げたエリオットを、オスカルは抱き込んで優しく体を撫でながら穿ち続けている。
ずっと、達している気がする。意味のある言葉はもうなくて、全部が掠れた嬌声と息づかい。背に回した手に力が入って思わず引っ掻いてしまっても、オスカルの顔が変わる事はなかった。
「んっ、気持ちいい……エリオット、いい?」
言葉は出ない。涙目で見上げ、代わりに何度も頷いてしがみついた。
最奥を抉るようにされる度に頭のどこかで火花が散る。「いい?」と聞いてきたのに、そんな時間が長く感じる。もう、お腹の中は苦しくて一杯で、それでもまだオスカルは中で大きくなっている。熱くて、溶けてしまいそう。
「オスカっ、もっ、もうダメです!」
「っ!」
正気をフル動員して悲鳴のように声を上げたエリオットの中で、オスカルが不意に爆ぜた。最奥に叩きつけるような熱い滴りに、エリオットもまた達して震える。荒っぽい息が二人分重なって、お互いに汗だくの体を抱きしめている。
呼吸が少し落ち着いて、そうしたら落ちてくるキス。絡ませて、何度も角度を変えて。そうして最後まで貪ると、オスカルはエリオットの中から抜けてしまった。
今日もこれで終わり。そう思っていると不意に体をひっくり返されうつ伏せにさせられる。そして尻をヒタリと触ってきた。
「……え?」
「今日は、心ゆくまで堪能していいんでしょ?」
「………………えっ」
両の親指がまだ緩い後孔を左右に開く。すると先程出された白濁がトロトロと溢れ出て太股を汚して落ちていく。
「うわ、エロいな」
「貴方が出したものですよ!」
「分かってる。だから愛しいし、何度でもマーキングしたい。僕のものだって、主張したいんだよね」
言うと、腰を掴まれまだ柔らかい所に復活した熱源を当てられる。そしてゆっくりと擦りつけるように中に押し入ってきた。
「あっ……はぁぁ!」
「濡れて滑りがよくなってるね。今度はゆっくり、エリオットの中を沢山気持ち良くしてあげるね」
「もっ、十分ですから!!」
エリオットの悲痛な叫びは珍しくオスカルにスルーされたのだった。
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