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実際に二人を引き合わせたのは次の日のことだ。
予想した通り二人は互いに警戒し合った。フェルは誰の目にも明らかなくらい動揺し、ベスは不快感を必死に押し殺して引きつった笑いを浮かべていた。
「大丈夫よ、彼女は私の友人なの」
ヴィッキーはまずフェルに笑い掛ける。
子供のように不安がっているフェルに、ベスは手を差し出す。
「あたしはベス、よろしくね」
恐る恐るフェルはベスと握手を交わした。
べスは笑っていた。どこかヒステリックな笑い方だったが、フェルは気付かない。それどころか彼の表情には安堵の色さえ浮かんでいるではないか。
ヴィッキーの友達なら信じてもいいとフェルは楽観的に考えたのだろう。彼女が嫉妬しているなんてかけらも思ってはいないのだ。
他人を疑うことを知らないフェルは、この一件でベスと仲良くなれたのだと思って胸をなでおろしている。
一方ベスの顔色は悪く、さっきから嫌な汗をかきながら燃えるような瞳でフェルをじっと睨んでいた。
「ごめんヴィッキー、あたし気分が悪いからもう帰るよ」
「送っていくわ」
「いいよ! 大丈夫だから」
物凄い表情でベスは去っていき、ほどなくして彼女と入れ違いにルークが尋ねてくる。
「今しがたベスとすれ違ったのですが」
「彼のことを紹介していたの。どちらも私の大事な友人ですもの」
ヴィッキーはいつものように笑うと、ルークに気付かれない様にフェルに目配せた。
「いらっしゃい」
フェルはルークに対して、ヴィッキーの言いつけ通りこれまでと同じように接した。
そこでふと、彼はルークの右手首に注目した。花と木の実で作ったブレスレットをしている。いつもはこんなもの身に着けていないから、フェルは不思議そうな顔をしている。
ヴィッキーにはそれが、村の小さな女の子の手作りの物だとすぐにわかった。草花や木の実で飾りを作るのが好きな子で、自分の作品をしょっちゅうプレゼントしてくれるのだ。
ルークは相変わらず気さくで優しい。
フェルは彼へ警戒心を抱いているものの、疑い切ることもできないといった様子だ。
ヴィッキーには、フェルがまだ彼を気にしているのが手に取るようにわかった。
表に出しはしないものの、不愉快で堪らない。
でもそれも、今だけだ。
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