13人が本棚に入れています
本棚に追加
その次の日、ヴィッキーは朝からベスを連れたってフェルの元へ来ていた。
フェルは今網細工に夢中らしく、その辺に生えているツルを編んで籠やリースを作っている。ヴィッキーが彼に教えた物で、これに花や木の実を飾って可愛らしく仕上げるのだ。
フェルは自分の容姿が醜い分だけ美しい物への憧れが強いのだろう。
「素敵ね」
そんなささいな出来事でも褒められたフェルは嬉しそうにしたが、様子を見せつけられているベスは面白くなさそうだ。
「あの」
いきなりフェルに話しかけられ、ベスは刺々しい返事をした。
「え、なに?」
「よかったら、一緒に」
おずおずと誘ってくるフェルを、ベスは強く睨んだ。フェルはびくりと息を呑む。
「ご、ごめんなさい」
「ッ!」
彼の態度が気に入らないらしく、ベスはそのまま教会を出て行ってしまった。なにがいけなかったのかわからなくてフェルはおろおろしてしまう。
「大丈夫、私に任せて」
彼にそう言い残して、ヴィッキーはベスを追い掛けた。
ベスはすぐそこの森の中でうずくまっている。
「ベス、大丈夫?」
「やっぱあいつ嫌い。なんかよくわかんないけど、すっごい嫌」
ベスは漠然とした文句を繰り返している。そんな彼女にヴィッキーは憐れむように呟いた。
「今の私には、あなたの方が怪物のように見えるわ」
「!」
べスはショックを受けた形相でヴィッキーを見る。
「ごめんなさい、気を悪くしないで。ひどく顔色が悪かったから」
「ひどいよヴィッキー。なんなんだよ、もう」
めそめそするベスをヴィッキーはそっと抱きしめる。
「ごめんなさいね。私がフェルを気に掛けなければ、こんな風にあなたを傷付けなくて済んだのに。フェルが、いなければ」
「フェルが、いなければ」
「こうはならなかったのにね」
「そう。そうだよね、あいつがいなければ」
ベスは低く、濁った声でヴィッキーの言った言葉を反芻した。
ヴィッキーがひそかに笑んでいることにも気付かないまま。
最初のコメントを投稿しよう!