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頬を軽く叩かれる感触がして、フェルは目を開ける。
「フェル、大丈夫?」
ヴィッキーが不安そうにこちらを見ていた。
体が熱っぽくて、気持ちが悪い。頭も重かったけれど、フェルはどうにか上体を起き上がらせる。
「あー? なにが、あった?」
フェルはぼんやりと辺りを見回す。
さっきはひどく視界がぼやけていたが、今はちゃんとどこになにがあるのかを認識できる。
「っ、うぅ」
「え? な、なに? ヴィッキー?」
いきなり涙ぐんだヴィッキーにフェルは驚く。そしてすぐ、ぬめりとした嫌な感覚に顔を青くした。ヴィッキーの腕から血が出ていたのだ。
「その怪我」
フェルはおろおろする。
怪我による痛みで泣いているのだろうかと思った。だけどなんとなく、そうではなさそうな雰囲気だ。
「これくらい平気よ。それよりもあなたが無事でよかった」
ヴィッキーは泣きながら縋り付いてきた。
フェルは自分が何者かに襲われたのだと思い出し、彼女が自分を庇ったこと。怪我をしてしまったことを悟る。
今になって恐怖が次々と押し寄せてきてフェルは混乱した。
それからフェルは泣きながらヴィッキーの手当てをした。何度もごめんなさい、ごめんなさいと言う彼をヴィッキーは優しくなだめてくれた。
「どうして? 一体、誰がこんなことを」
「私にもわからない。村の誰かだと思うけど、顔を隠していたもの」
「そ、そう」
「あら、これは」
ヴィッキーはおもむろになにかを拾ってフェルに見せてきた。これには見覚えがある。
木の実や草で作られた、千切れたブレスレットだ。
「まさか、さっきの奴がつけていた物?」
フェルはショックを受ける。
それはよくルークがつけている、あのブレスレットだったのだ。
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