5 疑心暗鬼

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 頬を軽く叩かれる感触がして、フェルは目を開ける。 「フェル、大丈夫?」  ヴィッキーが不安そうにこちらを見ていた。  体が熱っぽくて、気持ちが悪い。頭も重かったけれど、フェルはどうにか上体を起き上がらせる。 「あー? なにが、あった?」  フェルはぼんやりと辺りを見回す。  さっきはひどく視界がぼやけていたが、今はちゃんとどこになにがあるのかを認識できる。 「っ、うぅ」 「え? な、なに? ヴィッキー?」  いきなり涙ぐんだヴィッキーにフェルは驚く。そしてすぐ、ぬめりとした嫌な感覚に顔を青くした。ヴィッキーの腕から血が出ていたのだ。 「その怪我」  フェルはおろおろする。  怪我による痛みで泣いているのだろうかと思った。だけどなんとなく、そうではなさそうな雰囲気だ。 「これくらい平気よ。それよりもあなたが無事でよかった」  ヴィッキーは泣きながら縋り付いてきた。  フェルは自分が何者かに襲われたのだと思い出し、彼女が自分を庇ったこと。怪我をしてしまったことを悟る。  今になって恐怖が次々と押し寄せてきてフェルは混乱した。  それからフェルは泣きながらヴィッキーの手当てをした。何度もごめんなさい、ごめんなさいと言う彼をヴィッキーは優しくなだめてくれた。 「どうして? 一体、誰がこんなことを」 「私にもわからない。村の誰かだと思うけど、顔を隠していたもの」 「そ、そう」 「あら、これは」  ヴィッキーはおもむろになにかを拾ってフェルに見せてきた。これには見覚えがある。  木の実や草で作られた、千切れたブレスレットだ。 「まさか、さっきの奴がつけていた物?」  フェルはショックを受ける。  それはよくルークがつけている、あのブレスレットだったのだ。
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