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ルークの用事はそれから小一時間後には済ますことができた。彼は森に入って迷子になった子供たちを一緒に捜してほしいと頼んできたのだ。
「ヴィッキーがいてくれて本当によかった。おかげで、みんなを無事に保護できました」
へらへら笑うルークにヴィッキーも微笑みで返す。
まったく、人を便利屋かなにかだと思っているのだろうか。
幸い子供たちはすぐに見つかったが、空には雲がかかって今にも雨が降り出してきそうだ。さっきまでいい天気だったのに、まったくついていない。
「さぁ、親御さんたちが心配していましたよ。早く帰りましょう」
ルークは子供たちを引き連れて帰路を急いだ。
男の子が二人、女の子が一人、計三人の子供と一緒に森の中を歩いていく。
木々の上には厚い雲が広がっている。雨が降る前に家に帰りつきたいものだ。
「結局見つからなかったね」
片方の男の子がぼやくと、もう片方の男の子がやや涙ぐみながら声を上げる。
「本当に見たもん!」
「どうしたの?」
うんざりしつつ、それを表に出すことなくヴィッキーは尋ねた。
「森にお化けが住んでるんだよ!」
男の子は一生懸命に語り出した。
「あのね、この近くで見たって聞いたの。だからやっつけてやろうと思って!」
「それで森の中に入ったの?」
「うん、でも道が分からなくなっちゃって」
どうやらそんな下らない理由で彼らは迷子になり、こちらの手を煩わせたらしい。
子供はすぐに面倒事を起こすから嫌いだ。
とはいえ。
「森に住むお化けね」
実のところ、ヴィッキーもその噂話を耳にしたことがある。
最初にそれを見たのは村の酔っぱらいだ。
夜の森で恐ろしい大男を見たとかいう話だったが、その馬鹿の世迷言に尾ひれがついて森に怪物が出ると噂になったのだ。
もちろんヴィッキーはそんな話を信じていない。
信じるのは子供か信心深い年寄りか、他にいるとすれば雑貨屋の二階に住んでいるベスくらいだろう。
「あたしついてこなければよかった」
男の子二人に付き合っていた女の子がぼやいた。
「でもヴィッキーが迎えに来てくれてよかった」
女の子はにこにこしながらヴィッキーを見上げた。
「そうだ、これ作ったの。あげる!」
お礼のつもりだろうか、女の子は花で作った首飾りをくれた。
嬉しそうにそれを受け取って首にかけてみせると、隣を歩いていたルークが目を細めた。
すでに、彼にはヴィッキーに好意を持つように魔法をかけてある。
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