コンクリートロードを走る

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「おう、お疲れ」 「すまない、遅くなった」  夜もすっかり更け日付が変わる頃、部室に真矢がやってきた。  透哉の方が先に部室についており、スナック菓子やジュースを買うなどして鑑賞の用意を済ませていた。 「準備までしてもらって、悪いな」 「これくらい構わないさ。俺、割と楽しみにしてたし」 「僕もだ。下宮があそこまで強く薦めるのも珍しかったからな」  会話もそこそこに、二人並んでソファーに座りブルーレイの再生を始める。  映し出されたのは繊細で美しいアニメーションだった。    丁寧な描写と音楽が世界観に深みを感じさせる。  描かれているのはありそうだけど、ありえないと言えるほど綺麗な青春だった。  クライマックス。  二人乗りの自転車が坂道をゆっくり駆け上がっていくのを、真矢と透哉は黙って見守る。  そして。  物語はエンディングを迎え、一本の映画の視聴が終わった。  二人ともしばらく一言も喋らなかった。  外は雨。  静かな部室に雨音がしずしずと僅かに聞こえていた。 「……」  無言で透哉が立ち上がった。  そしてそのまま部室のドアへと向かう。  真矢は何も言わず、目で透哉を追う。  そしてドアの前で立ち止まった透哉が、ようやく口を開いた。 「……俺、外走ってくる」  その言葉を聞き、真矢も立ち上がった。 「……僕も一緒に走る」  走る。  長身の男二人が夜の街をがむしゃらに走る。  頭が、顔が、服が。雨で濡れるのも構わずに。  もう戻れないあの頃に想いを馳せて。  コンクリートロードを、踏みしめながら。
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