Milk before sleeping

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なぜだろうか、周りがふわふわして甘く温かなものに包まれている気がする。…いや、包まれているが重力は感じない…浮かんでいるような気分だ。 頭上からは小さな子どものふにゃりとした笑い声とその母親の優しげな声。 その声に細く目を開けると、とたんに真っ白な世界が流れ込む。 驚いて私が目をきゅっとつむった途端、なぜかその真っ白は私をゆったりと包み込んだ。 とても暖かい場所だった。 真っ白に包まれた世界、陽だまりにいるような気持ちで私はぼんやり考える。 さっきまでわたしは布団にくるまって寝ていたはずだった。 ここのところ雪続きで、朝は非常に冷えた。 暖かい布団の中、どうも仕事が億劫でじっと、うずくまっていたはずだ。 …それがどうしてこのような真っ白の中にいるのだろうか。 考えを巡らせてみると、だんだんとぼやけていたのがはっきりしてくる。 …何分かして、浮かび上がってくるのを感じた。 なるほど……あぁわかった、これは夢か。 考えてみなくとも、こんなことは夢でしかありえないじゃないか。 でもなんだろうな… …全身がだんだん真っ白と溶け合っていくようでとても心地よい夢だ。 こんなにいい夢は初めて見たかもしれない。 いや、母と過ごした子供時代以来だったか…。 まあでも、夢だわかってしまえば、もっと楽しめるものだ、たとえば、泳いでみたり、冒険してみたり、子供っぽいと思うか?いや、みんなそうだろう わたしはひとりでそんなことを考えながら、なにがおきるのか、悪戯をしかける少年みたいに笑いながら、手でその真っ白を押そうとした。 そう、たしかに押したはずだった。 いや____押そうとしたのたが、どうやっても押せないのだ。 何度ためしても押せない。感覚すら薄れていくようにも感じる。 わたしはだんだんと焦りさえ覚えて… もう一度、こんどははっきりと浮かび上がる。 ____あぁ。 「___手は、どこへいった?」 理解してはいけなかった。夢だとしても思考が冴えすぎているなんて、思ってはいけなかったのだ。 ____だが、私は理解してしまった。 押すための腕がない、歩くための足が、触るための手が、理解するための頭が____鼓動するための心臓が 『どこにもなくなっている』 気絶してしまいたかった、その方がどんなに楽だったろうか。 だが、その事実はわたしを嘲笑うように呼吸することすら許してくれなかった。 ただわたしを包むのは、どこまでも暖かい真っ白な、闇だった。 「おかあさん、ホットミルクおいしいね。」 ふと、少年の声がした。 『そうでしょう、あなたのために 特別なマシュマロ を入れてあげたのよ。』 頭上からきこえる暖かな声は、どこか冷たさを含んでいる。 『____さ、冷めないうちにはやく飲みなさい』 私の母に似た声で、ソレは幼い私にそう言った。 ____コクン、と喉がなる音が聞こえた気がした。
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