とある女性とこころや

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とある女性とこころや

 ある日の昼下がり、カフェで旧友と語らっていました。  近況を語っており、少し話が途絶えた隙を狙ったように、あるところに不思議な写真屋さんがある、と彼女は言いました。  東村という駅から山に向かいます。そこから歩いて十五分のところに虹色大橋と言うものがあるそうです。  午後四時ピッタリに、その橋に着いている龍の頭を撫でると、写真屋が現れると言うのです。  そして、その写真屋は人の心を写すと言うのです。  ──私は自分の心が分かりません。  そこで私は、写真にして貰おうと早速出向くことになりました。  電車を何本も乗り継ぎました。最後にぽっぽぽ電車に乗りました。  その電車は深い橙色をしています。車内は首を振る形の扇風機が備え付けられていました。  ぽっぽぽ電車ではネットが繋がらず、開いてきた携帯を閉じ、代わりに文庫本を出しました。  本を読み終えた頃、ようやく東村駅に着きました。  歩くと、木のホームはミシミシと耳障りな音を立てました。  改札では、やる気の無さそうな駅員さんが居ます。  切符を渡すと、無造作にポイと捨てようやく此方を見ました。 「すみません、虹色大橋の行き方を教えてくれませんか?」 「嬢ちゃんこころや行くのか? それならな……」  案外丁寧に教えてくださりました。  礼を言うと頭をポリポリとかき、 「五時半終電だからな。で、次の電車は五時半。少ねえから気ぃつけろよ」  そう言い缶コーヒーを差し出してくれました。  私は礼を言って駅舎から足を踏み出しました。 ※  虹色大橋まではあっさりと着きました。橋は古く渡るのを躊躇してしまいそうです。
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