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おずおずと橋を渡りました。
ギイギイと音が響き、思わず、身体を小さくして渡りました。
そして龍の頭を二、三度撫でました。カサカサとして、冷たい感触に身体が縮みます。
橋から見える夕焼けに見惚れていると地響きが鳴りました。
驚いて見ると古びた店が出てきたのです。
こころや──そう書いてありました。
看板が掲げられています、『自分の心を知りたくありませんか?』と。
街中にあったら怪しいですが、不思議に信頼出来る雰囲気でした。
私は惹かれ行きました。
中にはご高齢の女性がいらっしゃいました。
「こんにちは」
声を張って言いました。
「あの──写真撮ってください」
女性は微笑みました。とても上品で、失礼ですが可愛らしかったです。
「良いですよ」
実にあっさりと頷いてくれました。驚き、「いいのですか?」と尋ねました。
ここまで来るのに不思議な儀式の様なものをしたので、何かもっと、例えば龍神様の鱗を持って来ないといけない、みたいなことを想像していました。
女性は微笑みカメラを取り出しました。
心を写すと言うので、世界に一つだけの特別なカメラを想像していました。
私はカメラに詳しくないですが、それはごく一般的に売られている少し古びた一眼レフのように見えます。
拍子抜けていると、「あなたを撮りますか?」と尋ねられました。
「はい、私の心を写してください」と答えました。
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