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「そこに立ってくださいね」
古びた階段を上がると大きな撮影場がありました。
よく、写真屋で見られるであろう緑色のカーテンのような背景がそびえ立っています。
と言うのも滅多に写真屋に行かないのでおぼろげな記憶でしかないのです。
「笑ってください」
そう女性は言うと、一眼レフを取り出しました。
そっと微笑するとパチンと間の抜けた音が狭い空間に響きました。
「少し、待っててくださいね。あぁ、現像の様子見ていかれますか?」
フィルムが未だある事に驚きつつ、はい、と頷き、女性の後を追いました。
急な階段を一段ずつ降りました。
「狭く、暗いですが」
女性はそう言いながらドアを開けてくれました。
部屋に入ると、ツンと薬品が鼻を刺す匂いが漂っています。
この酸っぱいような匂いはなんだか、昔を思い出し、落ち着きます。
女性は機械にフィルムをセットしました。
暫くして女性はそれを取り出しました。はっきりとは分かりませんが薬品に浸したりしています。
そして女性はパチンと洗濯挟みでそれを止めました。
「乾くまでお茶にしませんか? 静岡の美味しいお茶と、お饅頭があるんです」
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