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「お、美味しいです」
女性──君江さんに誘われ、お茶をしていました。
静岡のお茶はほろ苦く、すっきりとした甘味があります。
お饅頭も香ばしく、頬が緩みます。
お茶はふうふうと冷ましながら頂きました。
「でしょう? 嬉しいわ。お茶相手がいて」
君江さんはご主人に先立たれ、ずっと一人だそうです。
話し相手がいなく、寂しいと言っていました。
「私みたいに、ここに来る人は居ますか?」
「いますよ」
あっさり、君江さんは頷きました。
その後世間話をしていました。
仕事のことや自分の街、それから、ここ、こころやに来た経緯をお話ししました。
「よっこらせ」
しばらくすると君江さんは先ほどの部屋に戻りました。
どんな風に写るのか、興奮しつつ、緊張して待ちました。
無意識に手に汗が滲みます。
「はいどうぞ」
茶封筒を差し出されました。
お礼もそこそこに、封筒を開けました。
封はされていなかったので、あっさり出すことが出来ました。
そこには、真っ白な写真が入っていました。
失敗でしょうか。
恐る恐る君江さんを見上げると、君江さんは慈しむような微笑みを浮かべていました。それは聖母、と錯覚する程です。
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