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目が覚めたら白
『ねえねえ』
「うん?」
『牛乳と生クリーム、どっちがいい?』
「え?」
『飛び込むんならどっちがいい?』
「……うん?」
『どっちに飛び込みたい?』
「……ちょっと意味が分からないな」
俺は真っ白な空間で首を捻った。
もちろん、どっちも嫌である。それはどちらも美味しくいただく物で、間違っても飛び込む物ではない。
『ねえねえ』
呼び掛けてくる声はしつこい。
真っ白なこの空間が現実な訳がない。きっと夢だ。夢なのだ。こんなときにはさっさと目を覚ますに限る。そうだ。さっさと起きてしまおう。それがいい。
『起きたときに、好きな方用意しとくから!』
「……は?」
『起きたらね。どっぷんっ! って♡』
「って♡ じゃねえですわ」
『ねえどっち?』
「どっちも選べません」
『えー』
「当たり前でしょうが」
『どっちも欲しいなんて欲張りだなあ』
「何でそうなる」
『じゃあ、Aの扉とBの扉を用意しとくから、好きな方からどうぞ!』
「いや。だからね?」
誰だか知らないが全く話が通じない。なんてこった。どうすりゃいいんだ。こうなってくると、うっかり目を覚ますのも恐ろしい。
頭を抱えていると、薄ぼんやりと赤と青の靄が立ち、お笑い番組で見るようなAとBのパネルが現れた。
『さあどうぞ!!』
「いや待って。無理無理。絶っ対無理」
ヤバくない? これって、本当にただの夢? うっかりぼっちゃんしたらどうしよう。
『さあどっち!?』
この人何でこんなに楽しそうなんだ。そもそも何でこんな話に。
『さあさあ!』
「うおっ!? 何で? 引っ張られる!」
『さあ! 好きな方に飛び込んで!』
「やっやめて。ちょっと待って! せめて心の準備をぉ!」
『ざっぱぁーーん!!』
「いーやーあぁぁぁぁっっ」
どっちに突っ込んだのかは分からない。目を覚ましたら負けだ。ざっぱぁーーん! だ。絶対に起きてたまるもんか。俺は固く目を閉じた。
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