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米がないよ。今年も不作だ。凶作だ。それでも年貢の取り立て容赦ない。
乳飲み子が死ぬよ。爺と婆が死ぬよ。そこいらから野犬の姿が消えたよ。木の根を剥がれた木が倒れたよ。
不作だ不作だ。今日食べるものがない。犬も猫も鼠も虫も、全部全部食べ尽くしたよ。田んぼは干上がり、実りは一粒もない。
それでも年貢は取り立てられる。非情な役人は根こそぎ取り立てる。
死ぬ思いで育てた稲穂は何にも手元に残らない。
飢えたよ、餓えた。壊れるほどに餓えたよ。
何でもかんでも食べたよ、食べた。ひもじくて死んだ赤子の肉も、干からびて死んだ爺婆の肉も。
それでも腹は満たされない。飢餓地獄からは救われない。
あたしら羽があるけれど、それでも餓えて飛べなくなる。弱ったものは食べられる。
土を突ついていると襲われる。干上がった田んぼや畑を突ついて突ついて、不作はあたしらのせいにされたよ。
いつまでいつまで以津真天──そんな言葉が出来るほど、餓えたよ。
いつまでいつまで以津真天。いつまで続くの以津真天。いつまで餓えるの以津真天。
餓えるのあたしらも一緒。生きるのあたしらも一緒。だけどあたしら悪者にされた。
雀が突つくから、米が実らない。実った米を片端から食っていく。悪の化身だ。雀が以津真天だ。
ちゅんちゅんちゅん、ちゅんからちゅん
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