(2) シャッキリ働いて、ガッポリ稼ぎな

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大学もバイトも、ようやくリズムが掴めたのは春の連休を終えた頃だった。 どの講義も面白いと思えるようになったし、バイトでは神保さんの助けなしでもなんとかやれるようになってきた。 槙村さんに「コバッキー!」と呼ばれるのだけはどうしても慣れず、 「あのですね、やめてもらえませんかね、いい加減、その呼び名!」 やっと強気で言えるようになっても、槙村さんは何処吹く風で、ニッシッシと笑うだけだった。 バイトは週3、4で入れるようにしていたけれど、【紡木】さんには全く逢えなかった。 バイトの度に返却本を抱いて、図書館に届け物がある度に【紡木】さんの姿を探す。 (…今日もいないや) 別の時間帯にいるのかもしれないけれど、バイトをしている僕を…見て欲しいっていう、僕の独りよがり。 溜め息の数だけ日が過ぎていって…ついに返却の〆切日が来てしまった。 この日はいつもと違って、槙村さんの書店でひと労働させられて、運搬ルートがめちゃくちゃになった。 「ほんとにもう、そういう事はね、前もって言って貰わないと!今度やったら承知しませんよ!?」 「ハッハッハッ。ごめんごめーん。コーヒーあげるから、許してね?コバッキー」 すっかりこんな風に返せる間柄になった、槙村さんに奢って貰った缶コーヒーを握りしめて、ガラガラと台車を図書館に向けて押し出した。本日最後の届け先。 「お疲れさまです、今日の分の資料、お届けしましたー…」 決まり文句を言いながら裏口から館内に入る。 「あー、今日はカウンターに置くチラシばっかりだったよね。キミ、悪いけどカウンターまで運んでくれる?」 館長さんにそう言われて、はっと息を飲んだ。 カウンターへはこのバックヤードを突き抜けてすぐの所、裏口からもほんの少しだけ入口は見えていた。 今までの彼女の所在確認は…届けが終わって正面へ回り込んで外から、ガラスの向こうのカウンターを見るという…ちょっと、怪しい感じ。 「失礼します…」 カウンターとバックヤードを仕切る簾を掻き分けて、そう声を掛ける途中、僕は目を見開いた。 青とグレーのボーダーのシャツ。 【紡木】さんがいた。 カウンターの向こう側にいる誰かと、楽しそうに話をしている… サークル勧誘のチラシ付きティッシュをくれたあの人だった。 …
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