(2) シャッキリ働いて、ガッポリ稼ぎな

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やっと逢えたのに。嬉しいはずなのに。自分の中でドロリと何かが流れた。 「あ、ツムちゃん、誰か来たよ?」 僕に気が付いて、チラシの彼が【紡木】さんの肩を叩いた。 「あっはい、こんにちは。どういったご用でしょう?」 振り向いた彼女は、あの時と変わらない、泣き袋の目立つ笑顔を僕にくれた。 でも…僕の事は、覚えていないみたい。ショックだった。 「あ、えと、これをこちらに、運ぶように言われて…どこに置いたらいいですか?」 「あ、そしたらこっちのカウンターの下に…」 彼女の誘導で、迅速に資料を運ぶ。最後の束を置いた所で、あっ!と彼女が僕を見て声を上げた。 もしかして、思い出してくれた? 「その本、返却ですか?」 「へ? あ、あぁ、そうです、今日が最終日で」 すっかり忘れてた、本の事。ずっと手に持っていたそれを掲げる。 「よかったぁ、ずっと借りられてて、戻ってきたらすぐ借りようと思ってたんです」 そうなんだ。この本、読みたがってたんだ。 「あ、いや…借りっぱなしで俺の方こそ、なんかすいません」 「あっそんな、そんなつもりで言ったんじゃなくて…私こそごめんなさい!」 互いに平謝りしながら、僕達は返却のやりとりをした。 その様子をカウンターの向こうから静かに見ていたチラシの彼が、 「じゃあツムちゃん、またな。さっきの話よろしく。 あっ、そこの1年生くんにもよかったら説明してやって。 ねぇキミ、あの時のチラシ読んでくれた?いつでも大歓迎だからね~」 最後に僕に向けてニヤリと笑って、ゲートをくぐって外へ出ていった。 「え…けん…松堂さんの知り合いなんですか?」 「あ…いや…」 目を丸くして聞いてくる【紡木】さんに、なんて答えていいのか分からなかった。 ただとにかく、覚えてくれていたのが【紡木】さんじゃなくあの人だったって事に、妙な腹立ちを感じた。 …
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