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17時になる前に会場の居酒屋に着いた。
まだ開店しておらず、店先で何人か溜まって待っていた。
「あっ」
その中の一人と目が合って、自然と顔が綻ぶ。紡木さんだった。
紡木さんは僕の方に寄ってきて、
「来てくれてありがとう、木庭くん。でもごめんなさい、まだ中には入れないんだって」
申し訳なさそうに言った。そんな、紡木さんのせいじゃないのに。
「そうなんですね。
えっと…ここにいる人達、全員サークルの?」
「はい。まだ来てない人もいるけど。
実は新年度になってから初めての飲み会なんです。
新入生は今日は4人…あっ、木庭くんも数に入れちゃった、まだ入るって決まったわけじゃないのに」
「はは…」
どうしようかな、サークル。これに入れば、紡木さんに毎週逢えるのかな。
と考えている所へ、紡木さんの後ろからひょいっと松堂さんが顔を出した。
「おいツムちゃん、ちゃんと徴収してるか?」
「あっ、け…松堂さん。そうでしたそうでした。
木庭くん、新入生は初回だけ飲み代1000円なの。無料にできなくてごめんなさい。
私会計係だから…今お預かりしても大丈夫?」
「あ、もちろん。じゃあコレ…五千円から。お釣り出ます?」
「ふふふ。もちろん。ちゃんと準備してますよー…はい、4000円のお返しです」
お釣りの受け取りで紡木さんの手に触れてドキッとして、思わず素早く手を引っ込めた。
紡木さんは松堂さんと一緒に、他のメンバーの所へ会費を徴収しにいった。
あの二人、付き合ってるのかな。
紡木さんの指の柔らかさが残る自分の指先を、人知れずぎゅっと反対の手で握った。
…
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