(1) 1年遅れのスタートなんて、たいしたことないから

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(1) 1年遅れのスタートなんて、たいしたことないから

「……はぁ」 見頃を大分過ぎた桜の木から、風に煽られて散った花びらがヒラヒラと舞う。 所々に葉っぱが生えて、申し訳ないが小汚ない、まるで今の僕の心ん中みたいだ。 入学式の後の教室で貰った沢山の資料を抱えながら、僕は控えめに、深い溜め息をついた。 「(のぶ)()?あんた、キャンパス見てくの?かあさんはもう帰るけど」 平日だから、母親だけが入学式についてきた。長ったらしい挨拶だなんだにすっかりご退屈様、あくびを噛み殺しながら僕に聞く。 「いや、いい。俺も帰るから」 振り返った時に太い茶縁の眼鏡がずり落ちたので、中指でブリッジを押し上げながら、母親の元へ早歩きする。 バスや電車に揺られて1時間半かけて来た道を、また同じように戻っていった。 一浪してまで入った第一志望の大学だったが、今、僕は何の希望も持てずにいた。 現役で受かっていれば、こんな気持ちにならずにいられたのに。 …
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