(3) サークル、入る気になったかな?

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「あっそうだノブくん、ここで会えて良かったよ。 け…松堂さんに、ノブくんにサークル掲示板の説明してないだろって言われてて。 あのね、このアプリってやってる?この中で私達の掲示板置かせて貰ってて…」 あ、また。紡木さんの言い直し。 モヤモヤしながらも、紡木さんが一生懸命説明してくれるのを聞いた。 そしてひと通り終わって、「分からないことがあれば何でも聞いて」と紡木さんが言ったタイミングで、 「あのー、紡木さん。ずっと気になってて…不躾な質問しちゃうんだけど… 紡木さんと松堂さん、付き合ってるの?」 勇気を出して、聞いてみた。 「えっ! ちょっ、ちがうちがうちがうから。 何でそんな話になるかな、そんなんじゃないんだよぉ、ほんと」 顔を真っ赤にして全力否定をする紡木さん。 「だって…すごく仲良く見えるよ。 呼ぶ時もなんか、いちいち苗字に言い直してるし」 少しわざとらしく怪訝な眼差しを向けると、紡木さんはますます慌てふためいた。 「あっそれはね…あのね。実はね。 松堂さんと私、実家がご近所さんで。小さい頃よく遊んで貰っていて、剣ちゃんって呼んでたの。 中高は全然会わなくなっちゃって…大学に入って、偶然再会したの。 昔と同じに呼んだら、大学ではそれはやめてくれって怒られちゃって。 でも昔のがすっかり馴染んじゃってるから…いつも、言い直しちゃうのですよ」 そこまで言い切った後、紡木さんはえへへと照れ笑いをした。 なるほど、訳は分かったけど、まだモヤモヤが残るのは…松堂さんを話題に出した時の、紡木さんの笑顔のせいだと思った。 「そうなんだ。 …あ、もうこんな時間。早く戻らないと神保さんが心配する。 じゃあ紡木さん、またね」 早口でそう言って、バックヤードに向かおうとした時に、 「あっうん、ごめんね、忙しいのに足を止めさせて。またね。サークルでもここでのやりとりでも、これからもよろしくね」 紡木さんが僕の背中に向かってそう言った。 肩越しに視線を送ると、紡木さんは笑顔をくれた。 あれは、僕だけのものだよね? これからは紡木さんと接触する機会が増えるんだから、それをよしとしなくっちゃ。 たとえ…松堂さんの存在が紡木さんを揺るがしているのだとしても。 僕は…紡木さんといれる時間を、空間を、大事にしたい。 そんな事を漠然と思った。 ーーー思えばここが、始まりだったんだ。 …
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