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夏休み期間のシフトの話を終えて、帰る間際のティータイムを神保さんと過ごしていると、扉が勢いよく開いて槙村さんが滑り込んできた。
「神さん、いるっ?
あ、なーんだ、コバッキーも一緒かぁ。やだねー、男ふたりきりでお茶すすっちゃってさ。
あたしももらおっと。紅茶でいいや…」
荷物をドサッとソファーに投げて、まるで自分ちのように手際よくティーポットやらティーパックやらを出す。
ここのあらゆるものの配置を分かっているようで、不思議に思っていると、
「ハッハッ。せーちゃんは1年の時にここでバイトやって貰ってたからね。その頃からあまり変わってないや」
「そーそー。あたしのホームグランド~(笑)」
「あっ、お茶受けのお菓子の場所まで覚えてる(笑)まぁいいや、開けちゃって」
僕の心を読みながら、なんかコントみたいな調子で答える二人。
出されたお煎餅をかじりながら、僕達は少しだけ話をした。
「せーちゃん、こんな時間までいるの珍しいな。最後まで出てたの?
「うん。あたし、明日からもう講義なくて、お盆終わるまで実家帰るから。
最後に神さんにご挨拶と思って寄ってみた(笑)」
さっきの運搬の時に書店で会ってるのに、槙村さんはその話を僕にはしなかった。
何故?とは特に思わなかったが、今、神保さんにその話をしながらしまったという顔を僕に向けたから、とりあえず、へー、あ、そう、な顔をしておいた。
「あ、そーだ。木庭くんさぁ、来月の23日誕生日だろ。
その日にさぁ、飲みに行くか。3人で。俺が奢るからさぁ」
「えーっほんと?行く行く~。
コバッキーもついにハタチかぁ…うぅっ…かーさんカンゲキよ」
「ちょ出来上がる勝手に母親にならんで下さい、せーちゃん」
「うーん、あとはその敬語が出なければ…でも、大分あたしらに馴染んだね?神さん?」
「ハッハッハ。そうだなぁ」
入学してから3ヶ月、少しずつ、少しずつ変わっていく僕を、神保さんと槙村さんは楽しそうに見ていた。
…
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