(4) 10代最後の夏楽しめよ

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8月3日。紡木さんの誕生日。 海へは少し遠かったので、サークルでワゴン車を2台ほどレンタルして、松堂さんを始め運転免許を持っているメンバーが交代でハンドルを握る。 海へ向かう道すがら、参加メンバーを拾っていく。僕は家の最寄り駅で乗せて貰える事になっていて、朝の早い時間に家を出た。 「こんな早い時間から、夜まで?まったく… 変な事に巻き込まれないようにしなさいね」 もうすぐハタチになろうという息子にいつまでもグチグチうるさい母親に見送られるのを、無視したかった。 けれど、手にした紡木さんへの贈り物を握って、今日の楽しい予感を奮い立たせたおかげで、 「いってきます」 それだけは言えた。 「ノブおはよう。さあ乗れよ」 僕を迎えに来た車は、松堂さんが運転していた。 バックシートにはもうぎゅうぎゅうにメンバーが乗っていた。僕が最後らしい。 「部長、向こうも全員拾ったって」 助手席に座っているサブリーダーがスマホの液晶をスライドさせながら言った。もう1台と、掲示板で連絡を取り合っているようだった。 「よぉし、じゃあ行きますかぁ。少し遠いし早い時間だから、眠いヤツは今の内によく眠っとけよー」 ガハハと笑いながら、松堂さんはアクセルを踏んで、スルスルと車を出発させた。 車内を見渡す、紡木さんの姿はない。向こうの車に乗っているのかな。 そんな僕の気持ちなんて知るはずないんだけど、タイミングよく、 「部長、ツムちゃんはそっちに乗ってんのー?って向こうが聞いてきてるけど… え、ツムちゃんは?なんで今日の主役がいないの」 とサブリーダーが言った。 「あぁ、ツムちゃんね、なんか実家から荷物送られるって、指定が今日の午前中なんだと。 荷物届くまで寮から出られないから、後から合流するよ」 「えー?そんなの、寮母さんに任せればいいのに…」 「それがなぁ、ツムちゃんとこ、少し厳しい?んだよな。荷物届いたらすぐ電話しなきゃならないんだって」 なあんだぁ、びっくりさせないでよ、とメンバーが口々に言う中、 僕は紡木さんが来られなくなっちゃったのかという落胆と、後で合流出来ると知ってあぁよかったという安堵を同時に味わった。 早く、逢えないかな。 紡木さんに渡す予定のプレゼントを入れたカバンを、誰にも気付かれないように、ギュッと抱きしめた。 …
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