最悪の日①

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「最近、河上変わったよな」 「そうっすか?」 山本の呟きに、中田が疑問を呈する。 「俺にはよくわかんないっすけど。ああ、そういえば、お前もちょっと前、そんなこと言ってなかったっけ?」 「…何でしたっけ?」 突然話を振られた舞花は、当然忘れたふり、知らない振りをしてみせる。 だが、そんな小細工が山本相手に通じるわけはないのだ。 いい材料を見つけたとばかりに、彼はにんまりと笑った。 「へぇ。どの辺をそう思ったの?」 「いや、だから、私言ってないですってば」 焦る舞花に、彼はぐいっと身を寄せてくる。 思わず後ずさりしたけれど、すぐ後ろはもう壁だった。 「見た目が変わった?それとも中身?」 「ええっと、多分、中田さんが言ってるのって、結構前のことですよね?あの時、上のフロアで河上さんとお話しするのが初めてだったので、いつもとちょっと違うんだなって思っただけですよ」 「佐藤さんが来たときって、あれか。お前達が付き合ってるって、噂話がうるさくなったときだな」 そういえば、一華もそんなことを言ってたっけ。 あの時、山本マネージャーが席にいたかどうかなんて、全く舞花の記憶にはないけれど。 中田は、山本の言葉にあからさまに不機嫌になった。 「その噂、ほんとに迷惑なんですけど」 彼の言い分に、舞花は思わず眉をひそめる。 どの口が言う? こっちだって迷惑だ。 「何で俺が佐藤なんかと? あり得なくないっすか?」 「その言い方は、佐藤さんに大変失礼かと思うけど」 本当にその通り。 山本の言葉に同意したくなったのは、初めてだ。 山本は何か考えている風に顎に手を当てると、まるで今思いついたかのように こう言った。 「でもまぁ、佐藤さんには素敵な彼がいらっしゃるからね。誤解されても困るでしょう」 「え!?お前、彼氏できたの?」 中田の大声のせいで、今度はこっちが注目を集めるはめになった。 「出来てないから」 「でも、ほら。パーティーの二次会前にお話ししてたよね?」 「あれは、元彼です。もうとっくに別れてますから」 「ふうん。じゃ、今は?」 「…いませんけど?」 「そっか。なら、中田でもいいか」 「「良くないから」」 舞花と中田の声が綺麗に混ざる。 これじゃ、漫才じゃないか。 山本にいいように転がされている気がして、舞花はさらに不愉快になってきた。 舞花は気を取り直すと、もう一度頑張って笑顔を貼り付ける。 「とにかく、私は面白みの無い人間なので。せっかくだし、もっと楽しい方とお話しされたらいかがですか?」 「俺にはすごく面白い子に見えるけどね。特に、化粧品にこだわらないあたりが」 山本があえて口にしたであろう単語に、舞花は思わず息をのんだ。 この人、何が言いたいんだろう?
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