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プロローグ
「うん。じゃ、またね。大好きだよ」
ピッ。ツーツー。
舞花は、ちらと机の上の時計を見た。
23時45分。
着信があったのは22時過ぎだから、通話時間は一時間半と少し。今日は早く終わった。
18時に会って、食事して、別れたのは21時。わざわざ電話で話すことなんて何もないのに、この儀式は毎日欠かさず行われる。
正直、時間の無駄。でも、やめられない。
だって、やらないと泣きそうな声を出されるから。
嫌いになった?
機嫌悪い?
もしかして、具合悪い?今すぐ行こうか?
そんなことをいちいち答えるくらいなら、適当に会話しておいた方が楽だ。
付き合ってもう4年。あと少しで5年になるか。その間、電話を欠かしたのは両手で足りる回数しかない。
付き合いたての頃、学生時代は、それでも嬉しさが勝った。
大切にされてる証だと思ったから。
ケンカした時も、電話なら素直になれたし、悪いことばっかりというわけでもない。
でも、最近は、うざったいという感情がむくむくと沸いてくる。
「はぁぁ。寝よ」
枕元には読みかけの小説が転がっているけれど、今から読む気力もない。
また、明日にしよう。
明日はきっと時間が取れる、かもしれないから。
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