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エピローグ
大滝の打球がスタンドに入った。
えっ
頭が真っ白になる。
監督の「試合は終わったぞ」の一言で慌ててベンチを出て、試合後の礼を行う。
ナインが涙を流しているが、この時の僕は現実を理解出来なかった。
相手の校歌を聞き、通路を通って外に出る。
監督と半田はインタビューを受けていて、その間にバスに移動する。
バスの外には、莉乃の姿が見えた。
応援に来てくれて嬉しい反面、自分の不甲斐なさを恥じる。
僕の横には加藤が座り、いつまでも大滝に打たれた事に後悔し涙を滲ませる。
でも何だろう?この気持ちは
悔しい、悔しいのだけど・・
僕が投げていれば結果は変わっていたのだろうか?
勿論そんな事は仲間には言えない。
でも・・・
負けた事、甲子園が終わった事を受け止められない。
監督と本田がバスに乗り込むとバスは発車して旅館に到着する。
部屋に戻り私服に着替えて、ミーティングルームに選手が集まった。
コーチ、監督から、甲子園に出場できた事だけは褒められたが、直前練習までの気の緩み、闘争心の欠如を叱責された。
僕の心にも監督達の言葉が響き渡る。
激戦区である東京で勝ち抜いた自負が、更なる奢りになっていた。
今から思えば、何で最後の最後まで全力で練習して試合に臨まなかったのだろうと反省する。
すると加藤が立ち上がる
「みなさん、すいませんでした。俺のせいで負けてしまいました」
加藤の体が震えている。
「ここに来てからも浮かれていて、投球練習も中途半端でした。チームの皆、投げたくても投げれない勝利や安川さん投手陣には本当に申し訳ありませんでした!」
ミーティング会場の時が止まった。
そこで安川が話し出す
「俺や小野が故障して、いきなり投げたんだからしょうがない。ただ、夏までは投球練習もさぼるなよ。俺ら3年の最後の大会になるんだから、手を抜いたりしたら許さねえぞ」
本田も続く
「この甲子園の悔しさを夏に取り戻そうぜ」
選手の顔つきが変わった。
翌日には旅館を出発して東京に戻って行った。
広海学園は3回戦で神奈川の横田高校に大差で敗れる。
結局、春の大会は横田高校が制した。
せっかく掴んだ甲子園の切符。本当に次があるか分からない切符を目指して1からやり直すしか無い。
甲子園での不甲斐なさに胸にモヤモヤが残ったままだけど、もうこの悔しさを味わいたくない。
絶対に優勝してやる!
より甲子園への強い思いを抱き、僕の高校1年が終わった。
~夢を叶えろ!5(高校2年)に続く~
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