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「こら雄輔!またこんな汚い食べ方して!」
「急いでるんだよ!ごめんて。お茶碗つけといて〜。」
「あんたなぁ、お茶碗まだこんなご飯粒ついとるやないの。」
「わかったから、ああもう。次から気をつけるって。もう行くからな!」
「ほんまにもう!あんたはいっつも次、次って。いつその次はくるんかいね。」
母ちゃんは昔から食べ物のことになるとやけに厳しくなる。お米には神様がいるから一粒も残すなとか。魚の身がまだ骨に残ってるから最後まで食べろとか。
勉強しなくても、0時を過ぎて帰っても何も言わないくせに。
って俺は乙女か。
****
声が聞こえる。
まだ布団の中で夢心地の俺を階段下から母ちゃんが呼んでいた。
「雄輔〜、ご飯できたで。食べに来や〜。」
降りるのが遅いと「せっかくのご飯が冷めるだろ。」と母ちゃんがまた怒る。俺はわざと大きな音を立てて、急いでる風を装いながら階段を降り、食卓に向かった。
ほかほかの湯気の立ったお米に、肉じゃが、酢の物、お味噌汁。
今朝はオーソドックスな和食か。
うまそうだ。
「雄輔、今日は…………
俺の記憶はここで途絶えた。
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