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空を見上げると、ブラックホールのような黒い大きな穴が出現していた。
百人くらいだろうか。白い俺たちのかたまりが、ブラックホールに吸い込まれていく。
かたまりを吸い尽くすとブラックホールは消滅し、空は明るさを取り戻した。
俺は恐ろしくなった。
白い俺たちの会話から察するに、このブラックホールは何回でもやってきて、その度にひとかたまりずつ白い俺たちを吸い込んでいくのだろう。
俺もいずれは…。
なんなんだ、この世界は!
俺は勇気を出して、白い俺たちに尋ねた。
「あの、すみません。あの黒い穴に吸い込まれてしまったら、どうなるんでしょう。やっぱり…死ぬんでしょうか。」
「吸い込まれたら生まれ変われる。だから心配しなくていい。」
「何言ってんだ。吸い込まれたら終わりだよ!」
やはりどっちにしても死ぬってことには変わりないのか。
「吸い込まれた奴の中には、必死にもがいて途中で落っこちた奴もいるんだ。幸運なやつだぜ。」
「でもさ、俺思うんだけど。吸い込まれずに無事に残れたとして、この先どうなるんだ?もしここに残ってしまったら、それこそ終わり。なのかもしれないよ。」
俺はハッとした。穴に吸い込まれる恐怖のことばかりを考えていた。残ったら助かるという考えは間違いなのかもしれない。
誰かに答えを示してもらいたかった。吸い込まれるのと残るのとどちらが正解なのか。でも、ここにいる白い俺たちは、吸いこまれていないからここにまだ存在しているわけで、誰にも真実なんて分からないんだ。
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