ゆきのと雪だるま

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目の前一面の銀世界は夕陽に染まりオレンジ色をしていた。 冬の日没は早い。もうあと僅かで空は群青色に染まるだろう。 由紀乃と雪だるまは家の前を見渡すように、そこに佇んでいる。 「そうだ!名前!……えっと、私が"ゆきの"だから、あなたは"ゆきこ"ね!」 安直な名付けだと由紀乃は思ったけれど、「ゆきこちゃん」と口に出すと何だかしっくりと馴染んだように思う。 「ゆきこちゃん、ゆきこちゃん、」 返答は勿論ないが、呼ぶ事が楽しくて何度も呼んでしまう。呼ぶ内に愛着が沸き、一緒に家の中に入りたいと思ってしまった。 「それは、無理か。…そうだよね、溶けちゃうよね…」 自分だけが暖かい家に入ってもいいだろうかとさえ思って苦笑する。 家に入る前に自分の首にあるからし色のマフラーを外して、ゆきこちゃんの首にふわりと巻いた。 「寒いけど、これで我慢してね。…ゆきこちゃん、じゃあ、おやすみ」 由紀乃はそう言って家に戻る。玄関扉を閉める前に一度だけゆきこちゃんの背中に視線をやった。 「おやすみ、ゆきこちゃん」 ゆきこちゃんもお布団で一緒に眠れたらいいのに──と由紀乃は叶う事のない願いを口にした。 「ゆきこちゃん、お布団で、眠れたら、……いいのになぁ」 由紀乃が布団に入ると、ゆきこちゃんの上で星が瞬いていた。
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