ゆきのと雪だるま

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目の前の由紀乃が喋る。 「おめでとう、ゆきのちゃん。ゆきのちゃんのお願い叶ったんだよ!」 お願い?──と由紀乃は訊きたいのに口が動かない。けれど、目の前の由紀乃が動かない由紀乃を見て「どういう事か訊きたいって顔ね」と、さも楽しそうに話し始める。 「ゆきのちゃんさ、『ゆきこちゃん、お布団で、眠れたら、いいのになぁ』って願ったでしょ?それね、お星さまが叶えてくれたのよ!だから私、あったかくて、ふんわりしたお布団で眠る事が出来たのよ!ほんと、ありがとう。ゆきのちゃん」 そして、とびきりの笑顔で笑うと、一歩、二歩と離れていく。 「だから、」 そう前置きしてから、ゆったりとした動作で振り向くと言葉を続けた。 「雪だるま(わたし)が、ゆきので、由紀乃(あなた)雪だるま(ゆきこちゃん)よ! あなたとわたし、入れ替わったの、分かるかな?」 玄関前にの高らかな笑い声が響き、 そして雪だるまになった由紀乃は思う。 そっか、雪だるまに口をつけてあげなかったわね──と。 そしてお星さまがお願いを叶えてくれた事が嬉しくて、にっこり笑ってゆきこちゃんを見ていた。ゆきこちゃんは楽しそうに雪の中へ足を踏み入れいくつもの足跡を残していた。 風が吹くと首に巻かれたからし色のマフラーがふわりとなびいた。
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