恵美

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恵美

暮宮 恵美はバケモノと同居している。それに疑問はあまり抱かない。慣れた。機嫌の悪いとき少し怒りを感じるくらいだ。恵美は、バケモノの行動、思考などに関して意見を持たないようにしてる。持つと、怒り恐怖憎悪いろいろな感情が腹の底から這いずり出てくる。そんなことが何回かあった。ひどく疲れる。感情を外に出して少しなりとも発散されたかといえば、全然。バケモノは普段1人で話したり、一人分多く料理を作ったり、どう見てもサイズの合わない服を買ってきたり、意味の理解出来ない行動に勤しんでいる。だが私の感情の貯蔵庫に限界が来ると、それらの奇行を一切中止して部屋に引きこもる。とても、とても不気味だ。ピーンポーン インターフォンが、私以外いない部屋に響く。バケモノが帰ってきた。また、あの奇行を繰り返すのか酷く疲れる。バケモノに家の鍵は渡していない。基本、私は家にいるが買い物に行ったり、ベランダで洗濯物を吊るしたり、少し目を離すだけで部屋の物の配置がずれていることがある。バケモノがやったと思い鍵を取り上げてみたが、一向に謎の物体移動現象は変わらず。インターネットでそんな現象を調べてみたが、悪魔だの幽霊だの馬鹿みたいな物しか出てこない。ピーンポーン ああ、まだ玄関を開けていなかった。一回、玄関を開けなかったことがある。その時は深夜に警察が来て、大事になった。マンションの隣人たちにも、私がバケモノと同居していることが知られてしまった。それからやけに、隣人達が私によそよそしくなった。バケモノと同居している代償だろうか。ピーンポーン そうか、開けなければ。ズルズルと足を引きずって玄関へ行く。廊下の鏡に私が映る。とても窶れて見える。髪もぼさぼさだ。服だけブランド物だ。似合わない。笑う気力も湧かない。いつ買ったっけ?私は服には拘らないから、誰かが買ってくれた物だろう。誰だ?バケモノの同居人に物を買うなんて。もしかしたら、昔の恋人かもしれない。そうだ、謙二さんだ。大学生時代の恋人。今でも愛してる。とてもかっこよかった。今は何をしているのだろう。もうインターフォンはならないが、まだいるのだろう。鏡から目を離して鍵を開ける。バケモノがいる。それに、
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