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第一話 小さな騎士
俺は岩崎 渚。
どこにでもいる普通の男子で高校二年生。
普通に勉強して
普通に友達と遊びに行く……
だが、普通じゃない所もある。
それはこの童顔と 人よりも伸びるのが遅い身長……
(止まってなんかいないぞ!今は休憩中なんだ!!)
そんな俺でも、高校に入ると毎日女の子に声をかけられる様になった……
「岩崎くん……ちょっといいかな?……お話があるの。」
振り返ると 髪を緩く巻いた可愛くて大人しそうな女の子が、もじもじしながら立っている。
ああ、またか、と思いつつも俺は快く対応する。
「うん、いいよ。」
明日は文化祭初日、準備で色々忙しいのにと思ったけど これも俺の日課だから仕方がない。
女の子の話に付き合うことにする。
いつも通り校庭の隅にある大きな木の下に拉致られ………
「お願い!!修斗君のLIME ID教えて欲しいの!」
ほらね、いつも通り親友 辻 修斗のLIME IDをねだられるんだ。
俺の親友、辻 修斗は誰が見てもイケメンで、成績も常に上位にいて何でも出来る男。
7月のバスケットボールの夏季大会で、我が校を10年ぶりに優勝に導いたエースとして注目されている。
それまでも凄くモテていたのに、注目された次の日から修斗は、輪をかけて女子達にモテ始めた。
そうなると俺を呼びつける女子も増える。
女の子は毎回違うのにおねだりする内容はなぜか全て一緒。
そして毎回俺は……
「個人情報の漏洩は信用にかかわるから本人に聞いてくれる?」
事務的に毎回同じセリフを言う。
「本人が教えてくれないから頼んでいるの。メアドでも携帯でもいいから。教えて。お願いします。」
「そう言われても、本人の許可がないのに教えるわけにはいかないよ。」
「じゃあ、岩崎君が許可もらってきて!お願い!!修斗君の彼女になりたいの。」
…………何だよ。
可愛いけど、自己中でめちゃくちゃだよ。この子
「ねえ、前から不思議に思っていたんだけど、なんでみんな修斗のLIME IDを欲しがっているの?」
「え?なんでって……もちろん修斗君が言ったから❤」
「????????」
意味が分からないから首をかしげていると、じれったいみたいな感じで彼女は説明しだした。
「修斗君がね『俺は好きな子にしかLIME IDは教えない。』ってみんなの前で言ったの。」
あ、それは俺も修斗から聞いた。
でも……
「それがなんで俺の所に来るのかわからないんだけど。」
「修斗君に言われたあと、みんなで落ち込んだわ。でもね!一人の子が言ったのよ!『好きな子にしか教えない』ならLIME IDを手に入れた人が修斗君の彼女って言えるってことよね!!って!!」
なにそれ?
なんなんだよ。その滅茶苦茶な解釈~~!!
彼女達の頭の中って
好きな子にしかLIME IDを教えない。
↓
好きな子はLIME IDを知っている。
↓
LIME IDを入手する。
↓
LIME IDを持っている自分は皆に彼女宣言できる!!
↓
彼女宣言したら修斗くんと付き合える!!
と、おかしな五段変換になってんの????
本当にわけわからん。
修斗の気持ちは無視なのかよ。
今現在、修斗の携帯や、メアド、LIME IDの全てを知っているのは俺だけ、だから女子はこっそり聞きに来るのか………
そんなことなら、絶対教えてやるもんか。
特にこんな自己中な女の子達、修斗には釣り合わないし迷惑だよ。
それに……
俺だって修斗の事 好きなんだもん。
俺は好きな人をわざわざ自己中な女の子に差し出す程、お人好しじゃない。
それに、この子はすでに修斗に振られているから、教える必要はないよね。
「そんなの無理だよ。」
きっぱりと拒絶の言葉を言ってやると彼女は俺の胸ぐらを掴んで しがみついてきた。
「いやっ!!私、修斗君が好きなのっ!!どうしてもLIME IDが欲しいのっ!!教えて下さい!!」
俺の前で堂々と修斗のことが好きと言える彼女が羨ましくて悔しかった。
「俺だってあんた以上に修斗の事が好きなんだよっ!!」
と、言える事が出来たらどんなにいいだろう。
そんなこと言えないから、出来るだけ傍にいて俺が修斗を守るんだ。
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