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第十一話 疑う王様
生徒会室に入ると、なぜか呼んでいない生徒会長も一緒についてきた。
俺は修斗と副会長に用があるんだから
「すみません、生徒会長は……」
「つれないこと言うなよ~。俺と副会長は一心同体なんだ。ねえハニー❤」
「誰がハニーだ。」
「んじゃ、ダーリン❤」
このチャラチャラとした感じで遊び人みたいな生徒会長は苦手だ。
俺は叶わない恋を真剣に悩んでいるのに……、この人はきっといろんな女の子と遊びまくっているに違いない。
目の前で副会長にじゃれて、ふざけたようなやりとりをしている。
出て行って欲しいと言っても、きっとこの人はのらりくらりとかわして出て行かなそうだな…………もういいや、諦めよう。
「…………分かりました。生徒会長もいて下さって構いません。」
「やった❤ハニー❤俺もいて良いってサ❤」
だめだ、本当にこの人苦手だ。
俺は小さくため息をついた後、思い切り息を吸って思っていたことを口に出した。
「……単刀直入に聞きます。………副会長、修斗 二人で不正をしてたんですか?」
「不正?」
副会長は眉を顰めて不愉快そうな声で聞き返してきた。
「だってメダル確認の時に修斗と何か話していたじゃないですか。それに修斗は俺のメダルがアタリと知っていた。それは副会長が教えたからじゃないですか?!」
「……岩崎君は何か勘違いしているみたいだな。確かにヒントを教えたけど俺は全校生徒に言ったぞ。」
「そうだよねー。確かに全生徒に言ってたよなぁー。」
「俺、聞いてません。」
「校内放送で言ったから絶対に聞いているはずだ。それに誰にもわかるようなヒントを言うわけないだろう?」
「Can you repeat that again?」
(もう一度言ってあげて)
生徒会長は副会長に向かってなにか英語で言ったけど、ネイティブ過ぎで何を言っているか分からなかった。
「ふー、なんで英語なんだよ。みんなが分からないだろ。岩崎君、俺は皆に平等にヒントを言ったはずだぞ『可愛い大福が好きなんだ』と。」
「あ!」
そう言えば文化祭前日の放送でそんなこと言っていた。
思い返せば、あのメダルの妖怪は大福によく似ている……。
「何を勘違いしたんだか。一昨日、大量の大福を俺の所に持ってくる奴らが続出したんだ。ヒントだというのに大福が好きで俺が賄賂をよこせと言ったと思う輩が多くて参ったよ。」
「そうだよね~。俺も一生分の大福見た気がする~。ダーリンは大福もその中に包まれたお金も全部断ったんだよね。」
「当たり前だ、不正は許さな……ってダーリンって呼ぶなっ!!」
「ひててててて」
生徒会長の頬は真横に引っ張られて当たりのメダルの妖怪みたいな顔にされている。
「昔は普通のお祭りみたいだったのに、いつの間にか賄賂を渡したり権力を握るための道具になってしまったんだ。それが嫌で俺はみんなに平等にいきわたる方法を考えたんだ。俺のヒントに気が付いたのはほんの数名だったみたいだけど…………」
俺は一気に緊張感が抜けて へなへなとその場にしゃがみ込んだ。
「はー、なんだ良かったぁ。修斗はズルしてなかったんだ。」
「そう言えばヒントが分かってなかったのに岩崎君はどうやってメダルを見つけたんだ?」
「えっ?あっ、あの、俺、思いっきり足でメダルを踏んずけちゃったんです。汚れたメダルは誰にも拾ってもらえなさそうだから責任もって届けようと……。」
「踏んずけ………」
副生徒会長はメダルを踏んだことに目を見開いて驚いて言葉に詰まった。
「ぷっ!はははははははは!ダーリンの思惑通りじゃん。無欲の勝利だね。良かったよ。」
「あれ? でもチェックの時に何か話をしていましたよね?」
「ああ、このメダルで良いんだなって言っただけだ。」
「それって……」
「大丈夫大丈夫。聞いただけだから❤本人もハズレって知ってたみたいだしね。元々 辻君は皆が貢物持ってくる中、ダーリンに頭を下げて皆に公平にして下さいってお願いしに来たんぜ。それであのヒントを出すことになったんだよ。ね~?」
生徒会長が副会長にウインクして同意を促している。
「岩崎君はそんな真っ直ぐな奴が悪いことをすると思うのか?」
俺は左右に首を振った。
「思いません。疑ってすみませんでした。修斗、ごめん。」
疑った自分が恥ずかしくなって、二人に深く頭を下げた。
「……で 岩崎君、君の命令は何なんだい?」
「え? 今のですけど、本当のこと知りたくて」
「……あのなぁ、それって命令とか願い事じゃないぜ。」
「あ!じゃあ俺の願い事を修斗にあげるのはいいですか?俺のは もう叶えてもらったし、修斗は女の子達にメアドやLIME IDを毎日しつこく聞かれて大変だから聞くなって命令出させてあげたいんです。いいですか?」
生徒会長が俺を指さして真面目な顔で副会長に聞いた。
「おい、この生き物は天使か? 」
「純粋なんだろうな。まあ俺達が汚いものを見過ぎていると言うのもあるけど……」
「ナギ、本当にいいのか?俺に願い事くれても……後悔しても知らないぞ? 」
修斗が傍に来て俺を諭す様に確認してきた。
「後悔なんかしないよ。2つともあげるよ。あ!譲った事、みんなの前で言わなくちゃいけないのか!どうしたらいいですか? ……あれ?」
振り向くと生徒会長と副会長はもうドアの所にいて生徒会室から出ていこうとしている。
「待って!副会長っ、このことみんなに伝えないと……」
「それはどうかなぁ~。そんなことしなくてもいいんじゃないかなぁ~。」
ニヤニヤしている生徒会長の隣でキリッとした副会長が左手の中指で眼鏡の中心を押し上げながら言った。
「机の上にこの部屋の鍵があるから戸締りはちゃんとして帰って下さい。」
「えっ?」
パタンとドアが閉まると修斗と二人きりになった。
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