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成果主義
翌日赤い目をして出社した風太君は、昨日の事など思い出す暇もない程に仕事に追われていました。
彼の仕事は、簡単に言うと「成果」を上げることです。
しかしここ数ヶ月思うように成果が上がらず、風太君は追い詰められていました。
風太君の上司も「成果」を求めますが、そう簡単に上げられるものではありません。
上司は風太君に対して、発破を掛けたり、叱咤したり、成果の上がっている他の社員と比較したり、辱めたりとあの手この手を使って風太君を働かせようとします。
悔しい想いをしながら忙殺された日々を過ごしているものですから、昨日の些細な事など覚えていません。
いつもの深夜残業を終え、憔悴しきった風太君はお弁当を食べる時間も惜しく感じ、コンビニで栄養ドリンクを二本買いました。
これが今日の風太君のはじめての食事でした。
ふと昨晩の事を思い出しました。あの不思議な出来事は何だったんだろう。
途端に背中に冷たいものが走りました。
急いで調べて見ると、どうやら「小豆洗い」という妖怪である事が分かりました。
「何だ妖怪か」
風太君は得体の知れないものが自分の家に上がり込んでいる現実に恐怖を覚えつつも、不思議と安堵していました。
「あれなら上司の方が怖いじゃないか」
そう思いながら帰路につきました。
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