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3.バケモノとは何ぞや
「ま、概要は理解出来たと思う。そこでだな」
既定路線のように進めていく。いや、ダメだろ、ちょっと待て。
「部長、ちょっといいですか」
俺が手を上げて、遮ろうとした時、先に7課の星澤が挙手した。おお、やはり、推理ゲー専門部。論理的なツッコミをお願いします!
「おう、何だ?」
「バケモノと戦う各ステージは、地球が舞台ですか?」
いや、そこじゃねぇ! その前に、訊くことがあんだろうが!
「ああ、地球が舞台だな」
木村は、何故か胸を張る。
「でしたら――何かしらのパンデミック後の地球、ということでしょうか?」
どーでもいいよ、それ。バケモノがウヨウヨしてんだぜ。
「恐らくな」
「となると……何故主人公だけが、生き残ったんでしょうね?」
いや、コレ、フィクションですから。
「ま、それは販売までに追々解明されるだろ。他には?」
その回答も随分だな。
溜め息吐く間に、手を上げ損ねた。サッと小林が刺さり込む。
「あの、最終ステージに到達した後なんですが、アーマゲドンってのは、いつでも開催されてるんでしょうかね?」
おっ、星澤よりナイスクェスチョンだぞ、小林クン。
「アーマゲドンは、定期的に開催する予定だ」
木村の目がキラリと光る。それから、態とらしく前のめりの姿勢になり、声を潜めてみせた。
「実はな、まだ確定事項ではないんだが、年に何回かチャンピオン大会を開く計画もあるんだ!」
ああ?
「ほう!」
隣で熊田が感嘆した。何が『ほう!』だよ。ダメだな、コイツは。
「あのー、部長」
頭を掻きながら、俺は手を上げる。
「何だ、九十九。もちろん、いずれはグランドチャンピオン大会をだな」
うるせぇ、訊いてねぇよ!
「いや、その前に確認させていただきたいんですが」
少し不満気に、木村は身を起こす。んな、クイズ番組みたいなイベントに、食い付かねぇよ。
「バケモノとのバトルの段階では、プレーヤー間の交流はないんですよね?」
「あ――まぁな」
「それ、もったいないでしょう。情報交換とか、チーム戦でクリア出来るステージとか組み込んだ方が、ユーザーが嵌まり易いんじゃないですかね」
バトルゲームでも通信型が主流の現代に、散々1人で地味にレベル上げして、やっと対戦。しかも相手は人間同士ときた。バケモノ関係ないし。いっそのこと「アストラル・ヒーロー」ってタイトルに変えた方が、いいんじゃねぇのか。
沈黙。八雲だけが、フンフンと顎なんか撫でたりしている。
「あー、そのアイデアは、上に上げておくわ、九十九」
しばしの沈黙の後、木村は資料をパンっと叩き、閑話休題とばかりに1つ咳払いをした。ダメだ。やる気ねーぞ、こりゃ。
「さて、本題なんだがな。今日集まってもらったのは、他でもない。皆には、バケモノのアイデアを出して欲しいんだ」
「ええ?」
「何すか、それ?」
「まだ固まってないんですか?」
流石に、口々にツッコミが飛ぶ。まさか、そこから決まってないとは。
「ああ、誤解させて悪い。ステージで対戦するバケモノは、大体決まってるんだよ。問題は――」
急いで付け加えると、木村は、再びグッと胸を張る。
「ラスボスだ」
あー、やっぱりか。
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