3.バケモノとは何ぞや

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「人外に付いては、ちょっと一旦、離れようぜ」  俺は、手を上げた。これ以上種類を増やしていったところで、あまり意味はあるまい。 「バケモノ――という表現、そのものに注目すれば、通常の大きさ、能力を超えた場合にも使うよな」 「ああ。すげぇ怪力の人間を『バケモノみたいな力持ち』とか言うな」 「そうそう」  隣の熊田に同意する。 「つまり、人間そのものでも、バケモノには成り得るんですよね?」 「そうだ。『超人的』って意味でね」  星澤に向かって頷く。 「でも――逆のケースもありますよね」  奥の方から、城島がボソリと呟く 。 「大量殺人を起こした人間も、カイブツとかバケモノと揶揄されますよね?」 「そうだ。『常軌を逸した言動』にも使われるなぁ」 「売れない芸人が、ドカンと人気が出た時も『化ける』って言うよな。で、その芸人を指して『バケモノ』って」  と、したり顔の八雲。 「ま、結局『変化』って意味だよな」  何か……暗礁に乗り上げてきたぞ。  キュッとマーカーの音を立てたので、峯湖とホワイトボードへ注目が集まる。他者の視線を誘導するテクニックは、流石である。 「ねぇ。一度、特徴から、まとめてみない?」  彼女はしなやかな動きで、スッと脇に避ける。ズラリと書き出された項目を眺める。 「バケモノの見本市だなぁ」  と、感嘆するのは熊田。 「こうして見ると――多くのバケモノは、元になる動物があるんじゃないか」  バケモノワニ、狼男、化け猫、ミノタウロス――俺の感想に、八雲も賛同した。 「物――道具? が、元になっているケースもありますね」  妖怪、付喪神の類か。 「人間がベースってのも多いな」  ドラキュラ、幽霊、キョンシー、等々。 「後は――架空の訳わかんないヤツな。宇宙人、旧支配者とか」  配慮に欠ける熊田の言葉に、また星澤の眉間にシワが寄る。その奥の城島も、静かに気分を害している。 「よし、今度のラスボスは、ここに挙がったどれにも似ていない形状と、特徴を頼むぞ! 一旦、各自持ち帰りにして、練り込んで来てくれ!」  うわー、まだ何にも方向が決まらない内に宿題かよー。勘弁してくれぇー。  ――という、我々全員のゲンナリした様子には、木村はバケモノ級の鈍感力を発揮する。 「次回は、3日後の17時だ。今日は解散! お疲れー!」  あの意気揚々は、これから銀座だな。 「お疲れ様でしたー」 「お疲れっしたー」  グッタリした我々を置き去りに、木村は颯爽と出て行った。  ……うげぇ。3日なんて無理過ぎんだろ。
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