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○神社
夏のある日。超がつくほど、ど田舎にある祖母の家。五歳の灯は祖母の家の前にある坂道を上がり、古い神社に来ていた。
その神社には大きな岩がある。
『バタンっ!』と、岩の前で思いっきりすっ転んだ灯は泣きだした。
灯「うっ、うっ、うわぁぁぁん!」
響太「……うるせぇな……」
背後から聞こえてきた声。灯が振り返ると、自分と同じ年頃の男の子が不機嫌そうに睨みつけていた。
銀色の髪が印象的な男の子。彼の顔立ちは綺麗であったが、睨んだ目つきは少し怖かった。けれども、灯はその目に怯まない。
灯「転んで、痛いんだ! バッカヤロっ!」
響太「あ゛? うるせぇだけじゃなく生意気なガキだ!」
人間とは思えない速さで、男の子は灯を押えつけてきた。だが次の瞬間、彼は灯からすぐに離れた……というより、はじき飛ばされたのだ。
一瞬の出来事で、灯には何が起きたのか分からなかった。とりあえず倒れていた自分の身体を起こすと、男の子の声が耳に入る。
響太「まさか、お前が赤ずきんだとは……」
灯(え? 赤ずきん……?)
響太「俺はお前に、また会う事になる」
謎の言葉を残した男の子は、大きな岩の反対側に隠れてしまった。
灯「待って!」
灯は後を追って岩の反対側に行ってみたが、そこに男の子の姿はない。
灯「あれ? どこに……?」
岩の反対側は、人が一人通れる程の幅があるが、その後ろはすぐ土の壁が立ち塞がり、その先には行けない。男の子は隠れたのではなく、その場から消えたのだった。
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