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私、桜道 桃香が普通じゃなかったのは、産声をあげた瞬間からだった。
世界中に名の知られた大財閥、桜道商事の三代目代表取締役社長の父と、父の会社が運営する事業の一つ、有名私立学園の理事長を務める母との間に生まれた私。
幼稚園は母が理事長を務める学園の幼児教育部に入園させられた。その頃はまだ、母は学長という立場で、理事長は父方の祖母がやってたっけ。
とにかく、入園当初から特別扱いだったのは、言うまでもなく……。先生たちは割れ物に触る様に、私に接してきた。
血筋と天性の性格が合っていれば問題なかったのだろうけど、かなりのズレ幅でミスマッチだった私。先生たちはおてんばで言う事をきかない私に、いつも手をやいていた。
理事長の孫を思いっきり叱りとばす事も出来ないし……。円形脱毛症まで追い込まれたのは、確か年長クラスで私を受け持った担任。
私は私で、一緒に遊ぶ友達も出来ず、学園に馴染めなかった。
広大で綺麗過ぎる学舎。何もかもが整っている環境。そこに通う子どもは、全員が優等生。子どもなのに口に手をあてて笑い、子どもなのに綺麗にお辞儀までして見せる。
「ごきげんよう」の挨拶に、私の機嫌はいつも沈んでいた。全然、ごきげんよくない!
小学部にあがる日が近づいてきた。
だけど、この学園のそこには行きたくなかった。行かないって決めた。
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