30分だけのはずだった

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30分だけのはずだった

その日、俺は疲れ果てていた まさに疲労困憊というやつだ やっと自宅のアパートに着いたと思い少しホッとした こういう疲れた時 そう、ソファーに倒れ込みたいときはありがたい 俺の部屋は一階の角部屋だ エレベーターなど乗らずにすぐドアを開ければ自宅の玄関だった だが帰宅したとて、まだ寝るわけにはいかない 持ち帰った仕事があるのだ だがこのまま仕事をするのは無理だと思った俺はテレビで前にやっていた事を実践してみようと思った それは、コーヒーを飲んでソファーなどに寄り掛かって30分寝るというもの カフェインが30分経つと効いてくる性質を利用したアイデアだった これなら30分後には目がパッチリするはずだ その後、仕事をやればいいと思い濃いコーヒーを入れて飲み干した そしてソファーに寄りかかり目をつむった 案の定、すぐ寝落ちしたようだ 30分のはずだった ちょっと寝たつもりだったが 眠りが浅いと夢を見るらしいがその夜、深い眠りだったはずが夢?をみたようだった 夢の中で俺が、一人で歩いて行く すると色分けされたドアが4つ並んでいた 赤 白 黄 青 いずれかのドアを開けなければならないようだ 俺は黄色が好きだ 愛車もイエローだった 恐々、黄色のドアのノブに手をかけて回した 開いた ギギギーッ ドアの、向こうには黄色いお花畑が広がっていた あれ?どういうことだ? 慌てて走って他の色のドアを開けて回ったがどれも鍵がかかっているのか開くことはなかった 一回だけのチャンスだっていうのか?! 仕方ない お花畑で寝っ転がってみた どうやらまた、すやすやと眠りの世界に落ちていったようだ 次に目が覚めたら白い! 何もかも白い、しかも狭い所に入っていた ここはどこだ? 俺は30分だけ寝るつもりだったはずなのに すると、目の前に走馬灯のように映像が流れ始めた なんだこれは 俺の小さい頃からを映し出しているじゃないか それもスピードが早い そして今だなと思ったところで驚く映像を見た 俺がソファーで30分寝ようとして寝込んだ15分くらい経ったときだ とても深く寝入っている そこへ10tトラックが突っ込んできて、ソファーに寝ていた俺はもろに巻き込まれていた そこで映像はズバッと切れている えっ? 俺は死んだってことなのか? それとも ハッと気がついた もしかしてここは? 棺の中なのか? えっ? 何か音がする 火葬場の人がスイッチを押す音だ 俺の入った棺が動き出した 俺は死んだことに気がつかないほど突然死んだってことなのか・・・ もう後戻りはできない なにも残せず たださよならだ
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